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7月31日 陸自祝園分屯地 弾薬庫増設 拭えぬ不安

 防衛省が陸上自衛隊祝園分屯地(京都府精華町・京田辺市)に新たに弾薬庫(火薬庫)14棟を増設する計画は、8月にも造成工事が始まる。住民を対象にした説明会が計3回開かれたが、弾薬の量や保管場所など具体的な内容は「自衛隊の能力が明らかになるため」として回答しない部分も多く、地元の不安が完全に払拭されたとはいえない。経緯や課題をまとめた。

 政府は2022年12月、防衛力強化に向けて外交・安全保障政策の長期指針「国家安全保障戦略」など安保関連3文書を閣議決定した。23年度から5年間の防衛費は総額約43兆円に増額。弾薬庫に関しては32年度までに全国で約130棟を整備する方針を示した。

 祝園分屯地では23年に測量と土質調査を行い、広さや地盤強度、輸送の利便性などから適地と判断された。24年度予算案に弾薬庫8棟に関わる新設経費102億円を計上。25年度は国全体の弾薬庫整備費(336億円)の57%となる192億円が充てられた。防衛省近畿中部防衛局の担当者は「防衛力強化における七つの重点分野の一つとして『持続性』が求められ、それに基づき全国的に施設整備が進められている」とする。

 祝園分屯地の敷地は約470ヘクタールで、東京ドーム100個分という広さがある。担当者は説明会で「弾薬庫を増やしても敷地を拡大することなく、必要な保安距離を十分に確保できる」としたが、保管する弾薬の数や種類、住宅や学校など周辺建物との具体的な距離については「能力が明らかになるため回答できない」と繰り返した。弾薬庫は安保関連3文書の中で、海上自衛隊との共同運用も示されている。京都府内には舞鶴市に海上自衛隊の基地があり、専門家の間では「防衛省は米国からトマホークを購入し、イージス艦に搭載する。舞鶴基地のイージス艦に搭載されるミサイルを祝園分屯地に保管する可能性はある」との見方が強い。

 弾薬庫に関連する国内の事故では1939年、旧陸軍の禁野火薬庫(大阪府枚方市)で砲弾解体中に爆発が起こり、死者94人、負傷者602人の大惨事があった。事故後に代替地として祝園に弾薬庫が新設され、60年に陸上自衛隊に移管された。担当者は過去の経緯に触れながらも「保管は火薬類取締法などの関係法令に基づき適切に行われている。当時と現在では安全の意識にも格段の差がある」と理解を求めた。

 また祝園分屯地の弾薬庫を巡っては。60年2月に精華町と防衛庁(現防衛省)、陸上自衛隊の代表者が取り交わした23項目の行政文書が存在す る。当時、貯蔵施設を拡張しない確約を求めた町に対し、防衛庁と陸自側は協議の上で「現在以上用地買収及び貯蔵施設の拡張はしない」と回答。貯蔵量の基準を定め、増加する場合は町側と事前協議することを了承していた。

 だが政府は現在、確認書は「当時の精華町と防衛庁が町からの要望とそれに対する回答を確認し記録したもの。契約的な意味合いを持つものではなく、町も同じ認識」とし、確認事項には縛られないとしている。精華町も政府の認識を否定せず、杉浦正省町長は「学研都市にふさわしくない施設」と述べつつ、防衛省からの補助金を活用したまちづくりを進めている。

 説明会では、増設により有事の際に攻撃目標とされる危険が増すのではという懸念が寄せられた。近畿中部防衛局の大竹晃人企画部長は「まずは戦争を未然に防ぐことが重要であり、外交によって世界の仲間を増やし、何かあった場合に日本を攻めさせないような体制づくりをしている。ただそれだけでなく、攻められた時には日本として守れる形を整えている」と答えた。(後藤創平)


藤岡惇・立命大名誉教授抑止力は戦争の引き金に

 陸上自衛隊祝園分屯地(精華町・京田辺市)の弾薬庫増設は、政府が掲げる「防衛力強化」の一環だ。背景には何があるのか。ミサイル防衛に詳しい立命館大名誉教授の藤岡惇さん(78)=京都市上京区=は、世界の覇権を維持したい米国の要求などを指摘した。(聞き手・後藤創平)

 日本の防衛費は長く国内総生産(GDP)比1%ほどで推移してきたが、政府は2027年度に2%に引き上げる目標を示している。防衛省は「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境」を理由に防衛力の抜本的強化を目指し、弾薬確保や施設整備が進められている。

 米国のトランプ政権は同盟国に防衛費増額を求めてきた。北大西洋条約機構(NATO)は加盟国の防衛費支出を同5%とすることで合意した。そのお金で買う武器は米国製だ。米国は結果的に世界のGDPの3〜5%を集めることになり、それで中国やロシアと対抗する。覇権国としての地位を何があっても守りたいということだろう。日本にとっては保険料のようなもので「命が惜しいならばGDP比を引き上げなさい。軍備を充実してきちんと貢献するように」と求められることになる。

    ◇

 祝園分屯地からミサイルが発射されることはないが、運び出された弾薬はどこで使われるか分からない。そもそも最終的な判断に必要な情報を持っているのは米国。彼らの宇宙技術や情報機関が調べあげたもので、日本は提供された情報に従い「何かよく分からないけど言われた通りにするしかない」という状況になりかねない。その情報が本当に信用できるのかは、多くの人たちが疑問に思っているところだろう。誤った情報に従い、知らない間に戦争に加担させられるリスクは無視できない。

 よく言われる抑止力というのは、どこまで行っても戦争の引き金になってしまう。東アジアでは台湾や朝鮮半島の問題が火種になる可能性がある。戦争を起こさない形で解決するには、知恵をみんなで出し合う必要がある。相互に信頼する東アジアをつくろうという動きが高まれば、弾薬庫の拡大や軍備拡張の必要がどこにあるのか、ということになる。

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 米国に100%賛成しない国々はあり、「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国の間でも広がっている。特に東南アジア諸国連合(ASEAN)では紛争の平和的解決を掲げている。その地域の全ての国が加盟し、相互の信頼関係でやっていく。集団的な話し合いで紛争を解決しようという仕組みを目指している。同じ考え方をASEANの北側、日本や韓国にも広げていければ、外交を中心に信頼関係を築き、経済や貿易を発展させる。それしか戦争を抑える力はない。核兵器の時代に人類が絶滅しないため、軍事力で平和は守れないという考え方をしっかりと持ってほしい。


自衛隊側の説明は外交努力の必要性を強調するが「ただそれだけでなく、攻められた時には日本として守れる形」が必要という。しかし、「日本を守る」とは具体的に何を指すのかは明らかではない。現状では、在日米軍の存在が最も「日本を守る」との認識からは遠いのではないだろうか。


7月31日 英国 パレスチナ国家承認へ

【ロンドン共同】英国のスターマー首相は29日、イスラエルがパレスチナ自治区ガザでの停戦に合意し、深刻化する飢餓などへの対策を取らなければ、9月の国連総会までにパレスチナを国家として承認する意向を表明した。戦闘開始以来のガザ側死者が6万人を超え、人道状況が悪化の一途をたどる中、条件付きの承認を示すことでイスラエルへの圧力を強めた。

 日米など先進7力国(G7)では、フランスが9月の国連総会でパレスチナを国家承認すると24日に表明した。英国が出した条件は、ネタニヤフ政権にとって即座には受け入れがたい内容とみられる。今後、他のG7各国の動向が注目される。地中海の島国マルタは29日、9月に国家承認すると表明した。

 スターマー氏は29日に記者会見し「ガザの悲惨な状況を終わらせる」ことが必要だと強調した。パレスチナとの「2国家共存」による恒久和平実現を求め、条件として、イスラム組織ハマスとの停戦合意や国連による人道支援の再開、ヨルダン川西岸を併合しないことを提示した。

 一方、イスラエルのネタニヤフ首相はX(旧ツイッター)でスターマー氏に「ハマスの極悪非道なテロ行為に褒美を与えている」と反発した。

 英国訪問を終えたトランプ米大統領は29日、米国に戻る専用機内で記者団に、スターマー氏とは国家承認について「一度も話していない」と述べた。国家承認はハマスを利することになると批判的な見方を示した。

 パレスチナを巡っては約150力国が国家承認しており、欧州では昨年、スペインなどが承認した。

 世界食糧計画(WFP)などは29日、ガザの一部地域で「飢饉」官言に必要な三つの条件のうち二つが満たされ「重大な危機」が差し迫っているとして、即時停戦し人道支援活動の強化を可能にするよう訴えた。


【インサイド】ガザ極限危機、欧州動かす

 英国がパレスチナを国家承認する意向を表明した。パレスチナ自治区ガザの極限的な人道危機が、承認に慎重だったフランスに続き、欧州の主要国を動かした。ガザ攻撃の手を緩めず、パレスチナ国家樹立による「2国家共存」を拒絶するイスラエルのネタニヤフ政権への危機感が高まっていた。承認は象徴的な動きだが、英仏が実現すれば大きな転換点となる。

 「2国家解決の目標が危機にさらされている。今こそ行動の時だ」。スターマー英首相は29日の演説で、ガザで続く「苦しみを終わらせなければならない」と訴えた。訪英していたトランプ米大統領が英国を離れるタイミングでの発表だった。

 英国は以前から2国家共存を支持する立場だったが、なぜ今、表明したのか―。英紙ガーディアンは二つの国際的な要因と、英国内の強い圧力があったと分析する。

 国際要因の一つはフランスのマクロン大統領が24日、先進7力国(G7)の先陣を切って承認方針を表明したこと。この際、トランプ氏は「大したことではない」と抑え気味の反応だった。もう一つはトランプ氏が訪英中、「英国の立場がどうだろうと構わない」と語り「暗黙の了解を与えた」ことだと指摘した。

 英国内では、有力閣僚から承認を支持する意見が出ていたほか、与党労働党を含む250人以上の下院議員が即時承認を求める書簡に署名し、政府に提出していた。

 パレスチナ問題は第1次大戦時、英国がアラブ人、ユダヤ人、フランス・ロシアと相反する約束を結んだ「三枚舌外交」が元凶と言われる。1917年の「バルフォア宣言」がイスラエル建国の基礎となり、紛争の引き金を引いたとされる。

 ラミー英外相は29日、ニューヨークの国連本部で開かれていたパレスチナ問題の解決を目指す国際会議で、バルフォア宣言を通じてイスラエル建国に重要な役割を果たした英国は「歴史の責任を背負う」と説明した。

 パレスチナを国家承認する国は約150力国に上る。2023年10月に始まったガザの戦闘が長期化する中、昨年、スペインやアイルランド、ノ ルウェーが承認した。イスラエルをけん制し、和平機運の醸成を目指す動きがじわじわと広がる。

 ネタニヤフ首相はスターマー氏に猛反発する。「テロリストへの融和策は常に失敗する。あなたも失望することになる」とX(旧ツイツター)で警告した。パレスチナとイスラム組織ハマスを同一視しており、2国家解決を求める国々と議論はかみ合っていない。(ロンドン共同) 


「世界は僕たちが死ぬのを見ていただけ」(2024.10.7 朝日新聞)との言葉が今でも響く。フランス、イギリスが発表したパレスチナの国家承認への道。ガザに平和をもたらす道が少しずつ進み始めたのだろうか。


7月30日 【視標】 一さじの砂糖もない…ガザ、殺りくの場に

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)保健局長  清田 明宏

 ガザは殺りくの場(キリングフィールド)となってしまった。

 先日、ガザにいる国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の同僚ソンドス・アブドさんと交流サイト(SNS)でチャットをした。彼女の10代半ばの息子さんは1型糖尿病で、生きるために毎日インスリンが必要だ。

 しかし、長く続く物資搬入の制限により、ガザではインスリンのような命に関わる薬剤の不足が深刻となっている。息子さんの体調とインスリンの入手状況を尋ねたところ、返ってきた言葉に思わず涙がこぼれた。

 「生きていくのが本当に大変で、日々を乗り越えること自体が難しい」とアブドさんは言った。「今はインスリンはある」とのことで、少し安心したが、その後の言葉に絶句した。「でも砂糖がない」

 現在、ガザでは砂糖や果物、甘いものがほとんど手に入らない。砂糖は1キロ100ドル(約1万4500円)もするという。アブドさんは「今のガザでは、砂糖はインスリンと同じくらい大事」と言った。その一言が胸に刺さった。

 1型糖尿病の子どもたちは、毎日数回インスリン注射が必要だが、時にインスリンの効き過ぎで低血糖発作を起こすことがある。意識を失い、命の危険すらある状態だ。だが、甘いジュースやキャンデイー、砂糖さえあれば、簡単に予防・対処できる。

 命を守る薬があっても、その副作用を防ぐ「砂糖」がない―。普通の世界では問題にもならないことが、今のガザで起こっている。この現実はあまりにも過酷だ。

 何とかならないかと思い、国連児童基金(ユニセフ)の友人に連絡した。ガザで広かっている栄養失調には、ピーナツバターを原料にしたゲル状の高カロリー栄養補助食が使われている。1型糖尿病の子どもたちの低血糖対策に転用できないかと尋ねた。

 しかし、友人の返事はさらに心を締め付けた。「ガザにはもう在庫が全くない。かつての在庫も、最近入った分も全て略奪された」。深刻な食料不足の中、今のガザでは食料の略奪が日常となっている。生き延びるため、人々は食べ物を奪い、市場で売っている。子どもたちの栄養失調を治すための特別な栄養補助食も例外ではない。

 ガザは、まさに殺りくの場と化してしまった。

 イスラエルの攻撃によって、毎日多くの一般市民が命を落としている。それに加え、アブドさんの息子のように、本来なら守れるはずの命が危機にさらされている。必要な医薬品はあっても、たった一さじの砂糖がない。あっても高すぎて買えない。

 「自分の子どもを守りたい」―。そう願う同僚の気持ちを思うと、涙が止まらない。

 これ以上、戦争を続ける必要はまったくない。

 一日も早い停戦を実現することこそが、紛争当事者、そして国際社会に課された責務である。



7月29日 ケア自治体協 高齢者シェアハウス後押し

 全国約120の自治体などでつくる「地域ケアサービス再生存続自治体協議会」は28日、東京都内で初会合を開き、人口減少が進む地域で介護施設などを維持するため、政府に規制緩和を提言する方針を決めた。政府は過疎地などで既存施設を活用した高齢者向けシェアハウスを整備する構想を掲げており、協議会は押しに向けて今後議論し、提言内容をまとめる。

 代表の一人、都竹淳也・岐阜県飛騨市長は会合で、過疎地では介護施設などの経営が厳しくなり、老後の住環境が課題だと指摘。「施設閉鎖や事業中止を契機とした人口流出が起きかねない」と語った。同じく代表の片山健也・北海道ニセコ町長は「(政府構想に)期待している自治体は多い」と述べ、協議会が積極的に制度設計を提案する必要があると話した。

 政府が想定するのは、単身高齢者や高齢夫婦らが低料金で暮らせるシェアハウス。採算悪化や人手不足で存続が危ぶまれる介護施設などを活用し、今後3年間で100ヵ所を目指す。整備主体は自治体で、政府は地方創生の交付金で改修を後押しする方針だ。


政府のシェアハウス計画は高齢者の介護人材不足への対応なのだが、住宅の賃貸制度の充実としても検討されるべき問題でもある。自宅を持つことで一生を終えることをサラリーマンの幸せだとする政策を進めてきたこれまでの政府の方針は、結局少子高齢化問題を解決することはできなかった。シェアハウスは一つの解決策でもあり、人々の幸福感の転換でもあるではないか。イギリスのレッチワース・ガーデン・シティーは都市問題を考えるうえでの古典的なモデルである。


7月29日 イスラエル軍 ガザ攻撃続行

【エルサレム、ワシントン共同】イスラエル軍は27日、パレスチナ自治区ガザヘの攻撃を続行、少なくとも63人が死亡した。中東の衛星テレビ、アルジャジーラが伝えた。イスラエル軍は同日から北部ガザ市など3地域で時限的に戦闘を休止。エジプトからガザに支援物資が搬入され、空中投下も実施された。だが、3地域以外では攻撃が継続、人道危機が改善されるかどうかは不透明だ。

 米国とイスラエルが主導する「ガザ人道財団」の食料配給拠点周辺では、殺到した住民にイスラエル軍が発砲し多数が死傷、混乱していた。世界保険機関(WHO)は27日、ガザで今年、栄養不足関連で74人が死亡、うち63人が7月だったと発表した。

 国際的な批判を受け。イスラエルは限定的な戦闘休止を発表。ただネタニヤフ首相は27日、戦闘継続の意思を改めて表明した。パレスチナ通信は28日、イスラエル軍がガザ市の住宅を攻撃、市民3人が死亡したと報じた。トランプ米大統領は27日、訪問先の英スコットランドで、ガザヘの人道支援を追加実施すると記者団に語った。「(イスラム組織ハマスが)人質を返還するつもりはない」と指摘し「イスラエルは今後どう対応するかを決断しなければならない」と述べた。

 ヨルダンの国営ペトラ通信によると、ヨルダンとアラブ首長国連邦(UAE)が27日、計25トンの食料や生活必需品を空中からガザに投下した。イスラエルメデイアによると、エジプト赤新月社は、ガザに入るトラックは100台を超え、物資は計1200トン以上だと明らかにした。

 ガザ保健当局によると、2023年10月の戦闘開始後のガザ側死者数は5万9800人を超える。


FAO世界で栄養失調7億人

 【ローマ共同】国連食糧農業機関(FAO)などは28日、2024年に世界の最大約7億2千万人が栄養失調状態だったと推定する報告書を公表した。ここ数年は全体として減少傾向にあるが、アフリカや西アジアでは増加がみられると指摘。食料価格高騰の影響に警鐘を鳴らし、各国政府に貧困層への支援策の必要性を訴えた。

 国連は30年までの飢餓撲滅を目標としているが、報告書は期限が迫る中で「大きく後れを取っている」と指摘。新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)やロシアのウクライナ侵攻などの影響が重なり、状況を悪化させたとした。

 24年には南アジアや南米などでは「顕著な改善」があったと強調。一方、アフリカでは人口の20%以上が栄養失調に陥った可能性があるとした。この傾向が続いた場合、30年には世界の約5億1200万人が栄養失調状態で、うち約6割がアフリカに集中するとの予測を示した。

 報告書では食料価格の高騰も分析。低所得国では富裕国に比べて健康的な食事に必要な費用上昇の影響が大きく、購入できない人の数は24年に約5億4500万人に上り、19年に比べて増加したという。


栄養失調状態にあることはなによりも非人道的である。それが、戦争によってもたらされていることは最悪である。しかし、政治を司っている人たちは栄養失調状態にあるとはとても思えない。この落差はなぜなのか。そしてかつて言われた「We are the 99%」を除く「1%」が世界の富を独占している状況は変わっていない。


7月28日 【表層深層】 自衛隊が「核の脅し」要求

 台湾有事を想定した日米の机上演習で、自衛隊は米軍に「核の脅し」をするよう迫り、米中間は一時高い緊張状態に陥った―。「核なき世界」という理想からはほど遠い、極限の事態を見据えたシミュレーションだ。中国が核戦力の増強を加速させ、米口による相互抑止の均衡が揺らぎつつある。日本は「拡大抑止」戦略への依存を強めるが、ある政府関係者は「核使用の責任を米とともに負えるのか」と指摘する。

 「中国の核の脅しには米国も核の脅しで対抗を!」。昨年2月、東京・市谷の防衛省地下にある中央指揮所。同省制服組トップの吉田圭秀統合幕僚長が強い口調で、米インド太平洋軍のアキリーノ司令官(当時)に何度も迫った。アキリーノ氏は抵抗したが、最後にはあきらめたように一言「分かった」と発した。

 日米はこれまでも台湾有事をテーマに演習をしてきた。部隊の配置場所や指揮系統の確認が主目的だったが、今回初めて中国による核の脅しがシナリオに加わった。ある関係者は「日米演習もここまで来たのかと防衛省・自衛隊内に衝撃が走った」と打ち明けた。

 米国防総省の推計では、中国の核弾頭数は2030年までに千発を超える。内陸の砂漠地帯で大陸間弾道ミサイル(ICBM)のサイロ(地下発射施設)を多数建設していることも判明。急ピッチの核軍拡に米国は危機感を強め、米口の均衡を前提としてきた核戦略の見直しを迫られている。

 米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)などは国防総省の助成金を受け、台湾有事を想定した机上演習を実施した。24年発表の報告書によると、15回の演習のうち多くのケースで中国が核を先制使用し、うち3回は民間人多数が犠牲となる「大惨事」に発展した。米側が先に使うケース もあった。日米演習はこうした想定を念頭に置いている可能性がある。

 中国は核の先制不使用を掲げ、非核国に核兵器を使ったり、核で脅したりすることもしないと宣言している。では、米国の「核の傘」の下にいる同盟国はどうかI。中国軍関係者は決まってこう答える。「日本は非核国だ。ただし、中国への核攻撃や核兵器運用に在日米軍基地が使われたり、自衛隊が支援したりすれば話は別だ」。核の脅しに通じるけん制だ。

 中国が台湾侵攻を決断した場合、日本の介入を阻止するため核で脅すとのシナリオは現実味をもって語られている。

 日本は戦争被爆国として核廃絶を訴え、保有国と非保有国の橋渡し役を自負する。だが現実には米の核の傘に守られているという矛盾を抱える。

 政府は、ノーベル平和賞を昨年受賞した日本原水爆被害者団体協議会(被団協)などが求める核兵器禁止条約の締約国会議へのオブザーバー参加に応じていない。さらには昨年7月に拡大抑止に関する日米閣僚会合を初開催。同12月には初のガイドライン(指針)を作成するなど、日米は核を介した結びつきをより強めている。

 今回の演習で、日本が核の脅威を盾に戦況の好転を促す可能をが明らかになった。ある政府関係者は「核を落とせば多数の市民が犠牲になる」と指摘。「拡大抑止は突き詰めると、核の使用を命じる米大統領と一緒に審判を受ける覚悟がわれわれ日本国民にあるのかという話だ」と警告した。


ICANの川崎哲委員被爆国責務反する

 自衛隊が米軍に「核の脅し」を求めたのは驚きだ。今回の演習では核は使用されずに済んだというが、現実もそのようになるとの保証はない。広島・長埼の非人道的な惨劇を踏まえ、いかなる状況下でも核使用に反対することが日本の役割のはずなのに、全く正反対なのか。態だ。核による威嚇は国際司法裁判所でも核兵器禁止条約でも違法とされている。それに反して日米当局者が密室で核戦争の準備を進めていると言え、看過できない。「拡大抑止協議」についての情報公開が必要であり、演習内容を国会で徹底的に追及するべきだ。


拓殖大佐藤丙午教授対抗要求は当然

 唯一の戦争被爆国として、日本が核兵器廃絶に取り組むことは重要だ。同時に周辺の中国やロシア、北朝鮮は核戦力を強化しており、日米同盟に基づいて米国の「核の傘」に頼らざるを得ないことは十分理解できる。昨年の日米演習で、中国の「核の脅し」に日本が米国に対抗するよう求めたのは不自然ではなく、当然とも言える。敵の核攻撃を受けない限り、核を使用しないという「核の先制不使用」宣言に日本は反対の立場だ。中国が核による威嚇をしていないのに米国に脅しを要求するなど別のシナリオも存在するはずで、その点に注目する必要がある。


米中いずれの国が「核の脅し」を行うかは不透明。今回のシミュレーションは大半が中国が「核の脅し」を行うことが想定されているようだが、それへの対抗という形で制服組が米国に「核の脅し」を求めたもの。武力を持つものはその使用をより効率的に行うための思考を常に持つものだが、必要なことは「核の脅し」に至る前のシミュレーションを、とりわけ戦争回避のための外交をどう描くかがまず検討されなければならない。


7月28日 文科省 地方大学の振興 どう図る

 18歳人口が減少する中、文部科学省が地方の大学や短期大などの高等教育機関の振興に向けた検討を進めている。高等教育機関を地域社会の核に据え、地方自治体や産業界との連携を強化し、地方創生やエッセンシャルワーカーの人材確保につなげる考え。一方、経営難の私立大への指導を強め、これまで規制緩和で拡大してきた大学や学部の新設には歯止めをかける。議論の行方は京都や滋賀の大学進営にも影響を与えそうだ。

 「大学での地域学習は地方創生や地場産業の継承・発展といった面でも重要な役割を果たす」。4月に文科省で地域大学振興に関する有識者会議の初会合が開かれた。兵庫県洲本市の職員が龍谷大と連携して取り組む再生可能エネルギーを活用した地域活性化の事例を紹介。群馬、山梨、愛媛各県の出身で地元の大学に通う学生らが志望動機や地域との関わりを発表した。

 委員らの意見交換では「産学連携の人材不足や予算確保が課題」「大学は相談の場をもっとオープンにすべき」などの意見が出た。会合に出席し、産学連携の取り組みを紹介した愛媛大の松村暢彦社会共創学部長は「潜在的な力が地域の産業にはある。いかに連携して引き出していくかが地方の大学に求められている」と語った。

 文科省によると、近年、地方の高等教育機関を中心に入学者数の減少による学生募集停止が相次ぎ、定員割れに陥る私立大は2024年度で約6割に上り、短大は9割以上だった。

 京都では京都ノートルダム女子大が26年度以降、学生募集を停止し、29年3月で大学院も含めて閉学する見通し。龍谷大短期大学部と池坊短大は今春から新入生の受け入れを停止し、京都光華女子大は26年度の入学生から男女共学化する。滋賀でも滋賀文教短大が26年度以降の学生募集を取りやめる。

 少子化や東京一極集中が進む中、地方の高等教育機関の経営は苦しく、淘汰を市場原理だけに委ねれば、再編や統合、縮小や撤退が地方に偏りかねない。地元進学希望者の学びの場の確保や、福祉や保育などの人材確保が難しくなり、住民の生活や産業基盤に大きな影響を与える恐れもある。

 文科省は国としてどのような支援ができるかや、自治体や企業との連携のモデルケース作りなどを有識者会議で検討してもらい、具体的な政策に役立てる。26年度の概算要求に向けて考え方をとりまとめる予定。担当者は「地域からどういう高等教育機関の役割が求められているかを踏まえ、これまでより連携を進めていかないといけない」と話す。


【インサイド】進む少子化 経営厳しく

 文部科学省の推計では、2025年の大学入学者数は約64万人だが、40年に約46万人、50年には約43万人にまで減る。日本私立学校振興・共済事業団が全国の大学法人に経営状況の見通しを聞いた調査では、23年度は「厳しい」と「やや厳しい」を合わせ66・8%で、5年前より21・7ポイント増えた。

 同事業団では独自の経営判断指標を作り、大学や短期大などの学校法人を分析している。23年度決算ベースで「自力再生が極めて困難な状態」の法人は2・9%、「経営困難状態」は23・4%で、いずれも前年度より増加した。

 急速な少子化を受け、文科省は私立大の規模適正化や経営安定に向け、経営難の学校法人に対し、経営改善を促す対象を約100法人まで拡大して指導を強め、改善しない場合は縮小や撤退などの判断を促す考え。学部新設時の審査基準もこれまでより厳しくする。25年度中に方針をまとめるという。

 立命館大教育開発推進機構の沖裕貴特命教授(高等教育論)は、地方大学などが存続するためには「社会人と留学生の獲得に加え、その大学を出て何ができるようになるか、どういった資格が手に入るのか明示することが大事」と特徴を打ち出す必要性を指摘。一方、「全ての大学が残ることはできず、ある程度の統廃合は仕方がない。大学や地方自治体、企業が危機感を共有しないといけない」と話す。


少子化での中小私学の経営不振の傾向は少なくとも20年も前から予測はできた。にもかかわらず新設学部の認可を含めて野放図に私大の経営拡大を容認してきた文科省といわゆる有識者会議は自らの責任を認めなければならない。そして、今は忘れ去られようとしている安部政権のアベノミクスという新自由主義的政策の誤りのつけがあちこちで出ているということを。


7月27日 日米両政府 核使用シナリオ議論

 日米両政府が、米国の核兵器と通常戦力による日本防衛を話し合う定例協議で、有事を想定したシミュレーション(机上演習)を複数回実施、米軍が核兵器を使用するシナリオを議論していたことが26日分かった。昨年12月に「拡大抑止に関するガイドライン(指針)」を初めて策定し、核使用時の政府間調整の手順を定め、日本側が意見を伝えることができる規定を明文化した。複数の両政府関係者が明らかにした。(以下略)


【解説】核抑止 有効手段なのか

 日米両政府が日本防衛に絡んで核兵器使用シナリオを議論していた。唯一の戦争被爆国として非核三原則を掲げる日本では国民の反核意識が根強く、安保政策の方向性に影響を及ぼしてきた。核抑止は疑念の連鎖や軍拡競争を招く側面もある。国民の安全を確保するために「核の傘」強化が有効な手段なのかどうかを絶えず検証するべきだ。

 中国が急速な核戦力増強を進め、北朝鮮も核保有国としてふるまう。日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増す中、核共有や独自の核武装を訴える政治家が現れ、核軍縮に逆行した主張が顕在化している。

 核武装といった極端な選択に比べ、核抑止力の強化は現実的な政策にも見える。だが核兵器によって相手の攻撃を抑止し、大規模な戦争を防いだとしても、核の危険性が取り除かれるわけではない。周辺地域で小規模な戦闘が続き、むしろ緊張が高まる危険も残る。

 政府は国民の不信感を招かないよう説明を尽くすとともに、外交を通じた地域の緊張緩和と、核に依存しない安保体制の構築にも取り組み続ける必要がある。(共同) 


【表層深層】「核の傘」強化 日米まい進

 日米両政府が外務・防衛当局間で、有事を想定した米軍の核兵器使用のシナリオを議論していたことが判明した。通常戦力にとどまらず、核運用を巡る協議にも踏み込み、日米が足並みをそろえて「核の傘」強化にまい進する。オープンな場での議論が広まらないまま質的変化を遂げつつある外交・安全保障政策。唯一の戦争被爆国の国民が置き去りになる懸念もある。

 「国民にきちんと説明するために必要な情報を米国から得られるのか」。石破茂首相は最近、日米が策定した「拡大抑止に関するガイドライン(指針)」について周囲に問いただした。米国が東アジア地域で核使用を迫られた場合、いつ、どんな手段を取るのか―。周辺によると、首相は情報共有の範囲や責任の所在を気にかけていたという。

 官邸筋は「指針は意思疎通の経路を定めた『入り口』の文書だ」と指摘。今後、米軍と自衛隊の間でも核の運用を巡る具体的な協議が進展するとみる。

 米国は近年、核の傘をアピールする方針に転換した。2010年に始まった日米当局者間の拡大抑止協議は従来、概要を示すだけだったが、バイテン前政権下の23年6月以降、より細かい内容を写真付きで公表。軍備を拡大する中国をけん制する狙いがある。

 日米の歩調が重なる転機となったのが、日本が22年12月に閣議決定した安保関連3文書だった。反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を初めて明記。歴代内閣は反撃能力を自衛権の範囲と解釈しつつ、政策判断で持たないとの立場を堅持してきたが、岸田文雄政権が転換した。

 当時の防衛省幹部は「米国は日本の反撃能力保有を高く評価した。安保協力が深化したことで、核を巡る協議にも前向きに応じる姿勢に変わった」と明かす。日本側の求めもあり、昨年7月には初となる閣僚級の拡大抑止協議が実現した。

 武力行使に至らない「グレーゾーン」から通常戦力による限定的な衝突、全面的な紛争卜。トランプ政権は核兵器の近代化を図っており、日本側は状況に応じて、米国の核抑止力を活用したいとの思惑がある。

 日米がこのまま核の運用で連携を深めた場合、有事を見据えた共同作戦計画に反映させ、訓練実施を目指すことも想定される。協議の場として、自衛隊と米軍を一体運用するための「同盟調整メカニズム(ACM)」の中に、拡大抑止の方向性を検討する特別チームを創設する案も取り沙汰されている。

 「核のどう喝」を用いてウクライナ侵攻を継続するロシアを止められない国際社会。台湾統一を悲願とする中国はこれを注視する。長崎大の西田充教授(国際安全保障)は厳しさを増す安保環境を踏まえ「北東アジアで核兵器が使われるリスクが高まっている」と指摘。「台湾侵攻や核使用を防ぐことが日米の最大の戦略目標で、中国や北朝鮮の核使用を含め、さまざまな想定をしておくのは重要なことだ」と強調する。

 ただ核抑止力への依存が高まれば、被爆国としてのジレンマも深まる。西田氏は「被爆国として、反対の声にも誠実に向き合うべきだ。『核を使わせないための取り組みだ』ということを政府は丁寧に説明する必要がある」とくぎを剌した。(ワシントン、東京共同)


「核武装は安上がり」との声を参政党の候補者があげた。こうした雰囲気が一部の政治家の中に根強くあるのは事実だろう。しかし、果たして核の傘や核武装で平和が構築できるのかという疑念も根深くある。そして、究極は「日本のために」アメリカは核兵器を使うのかということである。おそらく「アメリカのために」日本の米軍基地から核が発射されるあるいは輸送されるのだろう。そしてそれへの報復として日本の基地が核攻撃にさらされる恐れは大きい。「日本のために」は抑止拡大よりも平和を模索する外交による手段しか選択肢はない。


7月26日 相模原殺傷事件 地元の男性、園の職員に

 相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で2016年、45人が殺傷された事件から26日で9年となった。園では昨年、事件前のような交流の機会を増やそうと入所者と地域住民らが一緒に農作物を栽培する取り組みを始めた。発案したのは地元で育ち、園や入所者を身近な存在に感じ てきた谷口賢史さん(22)。今春職員になり「途切れたつながりを取り戻したい」と奔走している。

 谷口さんが育ったのは園のある千木良地区。小学生の頃から清掃活動や夏祭りで入所者と関わり、身近な存在だった。

 事件の日は、鳴り響くサイレンで目が覚めた。1週間前、入所者と万華鏡を作る催しがあったばかりで衝撃を受けた。そのうち園は取り壊さ、21年に再建したが、谷口さんは「いつもの千木良じゃない感じで寂しかった」。新型コロナウイルスの影響もあり入所者が地域行事へ参加する機会は一時的になくなった。

 大学の授業で地域の課題を住民や行政で解決する「地域福祉」を学び、農作業を通して交流を促す取り組みを発案。大学4年だった昨年、園に掛け合って実現した。

 昨年は農家や菓子店と協力してブルーベリーの焼き菓子を作り、千木良地区の夏祭りに園として初めて出店した。入所者は収穫や菓子の袋詰め、販売を担当。「お菓子屋さんになる夢がかなった」と喜ぶ人もいた。


津久井やまゆり園での事件は衝撃的だったが、その後施設の解体と再建に伴って記憶は薄れていった。家族の要望もあって園は収容施設として再建された。一方で地域での生活を求める動きもあり園から退所した人もあったと聞く。いずれにしても、障害を持つ人たちが地域で生活するというスタイルは必要で、こうした取り組みが発展して「共に生きる」地域が形成されていくことを期待する。


7月25日 フランス パレスチナを国家承認へ

【パリ共同】フランスのマクロン大統領は24日、X(旧ツイッター)で、9月に米ニューヨークで開かれる国連総会でパレスチナを国家として承認すると表明した。承認すれば、日米など先進7力国(G7)で初めてとなる。イスラエルのネタニヤフ首相は強く非難した。ルビオ米国務長官も反対を表明し、G7内の亀裂が表面化した。

 マクロン氏は国家承認により、パレスチナ自治区ガザヘの攻撃を続けるイスラエルに圧力をかけ、和平の機運を高めたい狙いがある。マクロン氏は「中東における永続的な平和」に向けた取り組みの一環だと説明。「今、緊急を要するのはガザの戦闘を停止し、市民を救済することだ」と強調した。

 ネタニヤフ氏はXで、マクロン氏の決定について「テロを報奨し、ガザのようにイランの代理勢力を生み出すリスクがある」と批判した。ルビオ氏もXで「軽率な決定は和平の実現を後退させる」と強く反対した。

 フランスはサウジアラビアと共催で今月28〜30日、ニューヨークの国連本部でパレスチナ問題解決に向けたハイレベル国際会議を開く。イスラエルとパレスチナの「2国家共存」の実現に向けた議論を活性化させるのが狙い。

 会議は6月に予定していたが、イスラエルによるイラン空爆で中東情勢の緊張が激化し、安全上の懸念などから延期されていた。

 パレスチナは約150カ国が国家承認しており、欧州ではスペインやアイルランド、ノルウェーなどが承認している。


【インサイド】(26日)「二重基準」批判 払拭狙う

 フランスがパレスチナを国家承認する方針を示した。深刻な人道危機に直面するパレスチナ自治区ガザの現実を前に、イスラエル擁護を続ける姿勢は「二重基準」との批判があり、払拭を狙う。国際社会が支持する中東和平実現に向け大きく踏み込んだ形だが、イスラエルと米国は猛反発。先進7力国(G7)で賛同の動きが広がるかどうかは未知数で、、日本も慎重な立場を崩していない。

 「中東和平に決定的な貢献を果たしたい」。フランスのマクロン大統領は自治政府のアッバス議長に宛てた書簡で、国家承認の意思を伝えた。ユダヤ人、イスラム教徒とも欧州最大のコミュニティーを抱えるフランスにとってパレスチナ問題は内政に直結する。

 2023年10月にイスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃して以降、マクロン氏はイスラエル支持を鮮明にした。しかしガザの人道危機が進むにつれ、態度を変化させた。今年4月にガザとエジプトの境界を訪れ、物資搬入がイスラエルに阻止される「生涯で見た最も悲惨な光景の一つ」を目の当たりにした。5月には「恥ずべきだ」とイスラエル批判を強めた。

 「軽率な決定はハマスを利するだけだ」。ルビオ米国務長官は24日、X(旧ツイッター)でマクロン氏を非難した。

 1993年の「オスロ合意」以降、国際社会でイスラエルとパレスチナが共存する2国家解決の機運が高まり、米国も支持してきたが、「歴代大統領で最も親イスラエル」を自称するトランプ大統領の下で風前のともしびに。ユダヤ系団体や親イスラエルのキリスト教福音派を支持層とし、イスラエル傾倒は深まる。

 ドイツはナチス時代のホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の加害責任から、戦後は「イスラエル支持」を国是としている。英国はスターマー首相が昨年の総選挙で国家承認を掲げたが、具体的な道筋は示していない。

 今回の方針を受け、イスラエルはフランスに治安情勢の情報共有といった協力関係の縮小も警告したとされる。イスラエルの激しい反発で国際社会が目指してきた解決策が揺らぐ恐れもある。

 日本政府も2国家解決を目指し、独立国家樹立に向けたパレスチナ人の努力を支援する立場だが、岩屋毅外相は「事態の改善につながるのかどうかしっかり考えなくてはいけない」と指摘する。

 背景には、イスラエルと緊密な米国の存在がある。外務省幹部は「日本にとって米国が承認していない事実は大きい」と指摘。その上で「承認によって全てが解決したと錯覚し、実際の和平が遠のくのは望ましくない」と主張する。別の外務省関係者は「各国が(マクロン氏に)追随するとは思えない」と予測した。(パリ、ワシントン、ベルリン、エルサレム、東京共同)


フランスの承認は遅すぎるとの恨みはあるもののG7ができる最大の和平工作であろう。他国がこれに続くことを望みたい。日本は「なめられてたまるか」なら、他国に先駆けて承認すべきだろう。


7月25日 法人調査 食費高騰「買えぬ」9割

 公益社団法人「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」(東京)は24日、経済的に困窮する子育て世帯の90.7%が「食費の値上がりで十分な食料を買えない」と答えたとの調査結果を発表した。食費の高騰を背景に食生活が悪化し、困窮世帯の子どもが体調不良や体重の減少、精神的不調に陥っていると訴えた。政府に支援拡充を求める。

 6月に調査。 18歳までの子どもがいる住民税非課税世帯などのうち、団体の食料支援に申し込んだ7856世帯が回答した。回答した世帯で暮らす子どもは1万4千人を超えるとしている。申し込んだ理由を複数回答で尋ねたところ「食費の値上がり」が90.7%で最多。「長期休暇に入り、給食がなくなるため食費が心配」65.3%、「親の食事を減らしている」63.4%と続いた。「子どもが満足するまでご飯を食べさせられない」も55.6%だった。

 子どもへの影響(複数回答)は、子どもが十分な食事を取れていないとした4344世帯のうち39.9%が「体調を崩しやすい」と答えた。他は「やせている」38.9%、「空腹でやる気が起きない、集中できない」35.2%など。担当者は「生活基盤が壊れている」とした。


日本国憲法第25条には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とある。とりわけ子どもへの保障は重要。夏休みで学校給食が実施されないなかでの困難は大きくなる。子ども食堂などの食糧支援が民間団体で行わるのが常態であるかのようになっているが、行政が積極的に方策を講ずる必要がある。


7月24日 国際司法裁判所 気候変動対策「国家に義務」

 国際司法裁判所(TCJ、オランダーハーグ)は23日、気候変動対策に関して、「各国は人為的な温室効果ガスの排出から環境を保護する国際法 上の義務がある」とする勧告的意見を言い渡した。気候変動について、TCJが国家の国際法上の義務を認めたのは初めて。

 TCJは気候変動について「緊急かつ(人類の)存続に関わる脅威」と位置づけた。「清潔で健康的、持続可能な環境で生きることは、人権で ある」として、国際人権法や国際慣習法も、気候変動に関する条約とともに適用されるとした。

 その上で、各国は法整備を含む「利用可能なあらゆる手段を用いて、環境に損害を与えないようにする義務がある」と強調。「各国が適切な措置 を講じなければ、国際法違反になる可能性がある」とも指摘した。また、国際法違反があった場合、損害賠償を含む国家責任が問われる可能性があると釘を刺した。

 国連総会は2023年、ICJに勧告的意見を出すよう求める決議を採択した。決議は@各国が人為的な温室効果ガスの排出から環境を守るためにいかなる義務を負うかA国家が対策をせずに重大な損害を生じさせた場合、どのような法的結果がもたらされるか、の2点について見解を求めていた。

 この決議は、海面上昇の危機に直面している太平洋の島国バヌアツが主導。一方、米国など主要な排出国は、温暖化対策の国際ルール「パリ協定」で国家の義務は網羅されているとし、TCJに慎重な判断を求めていた。

 TCJの勧告的意見に法的拘束力はない。ただ、193力国が加盟する国連の主要な司法機関の判断で、各国の政策や気候変動に関する裁判に影響を与える可能性がある。(ブリュッセル=森岡みづほ)(朝日新聞) 


国際司法裁判所に法的な措置を求めることは民間人からはできない。ただ国が、例えばバヌアツが、アメリカやロシアを訴えることはできる。それはいわば倫理の範囲でのこととなる。しかし、こうした判断が示されtことの異議は大きいといえる。


7月23日 ガザ 餓死続出、配給所で攻撃

【エルサレム共同】パレスチナ自治区ガザの保健当局は21日、食料配給関連の住民の死者が千人を超えたと発表した。22日には過去24時間に子どもを含む15人が餓死したと表明。しかし食料配給を受けたくても米イスラエル主導の配給拠点ではイスラエル軍の攻撃で死傷者が相次ぐ。空腹を紛らわそうと腹に石を巻き付けたり、力なく道端で倒れたりする住民も。飢えに苦しむ男性は「いっそ攻撃を受けて死にたい」と訴える。

 米国とイスラエルが主導する「ガザ人道財団」は5月27日に食料配給を開始した。食料を求め殺到した住民にイスラエル軍が発砲し、連日のように死傷者が出ている。軍は「威嚇射撃だった」などと強弁する。

 財団の配給拠点はガザ中部と南部に計4ヵ所のみ。従来は国連主体の配給拠点が約400ヵ所あった。多くの住民は長距離移動しなければ拠点にたどり着けず、国運人権高等弁務官事務所(OHCHR)は「女性や子どもら、最も立場の弱い人に支援が届かない」と財団の配給を非難。国連のグテレス事務総長は21日「人々の命を支える最後の命綱が崩壊しつつある」と危機感を強調した。

 「死の危険がある場所に妻や子どもを行かせられない」。ガザ北部でテント生活を送るワヒーディさん(47)が電話取材に訴えた。イスラエル軍の攻撃で右足を失い、車いす生活だ。食事は周りからの寄付に頼るが、家族はこの数日間、何も口にしていない。「イスラム教で自殺が禁じられていなければ、とっくに自殺している」と嘆いた。

 餓死者が相次ぐ状況に、国連幹部は「飢餓の危機が一気に広まり、止まらない」と懸念する。

 中東の衛星テレビ、アルジャジーラの記者は20日、北部ガザ市の病院で中継中に声を張り上げた。「これこそ。数分前に私がお伝えしたことです」。目の前で高齢女性が急に倒れ込み、周囲が救助する様子が映される。記者は声をからしながら説明を続けた。「みんなゆっくりと死に向かって いる。これが今のガザの光景です」


28ヶ国が即時停戦要求

【エルサレム共同】日本や英国など28力国は21日、米イスラエルが主導するパレスチナ自治区ガザの食料配給拠点でイスラエル軍が住民多数を「非人道的に殺害」していることを非難し、即時停戦や支援物資搬入の制限解除を求める共同声明を出した。イスラム組織八マスは声明を支持し、イス ラエルは「現実離れしている」と拒絶した。

 イスラエルメディアによると、イスラエル軍は21日、ガザ中部デールバラハで人質が拘束されているとみて攻撃を拡大した。他地域に比べ被害が比較的少ないデールバラハには避難民が多く、犠牲者がさらに増えるとの懸念が広がっている。

 28力国は声明で、米イスラエル主導の食料配給の仕組みはガザ住民の尊厳を奪うものだとして、食料支援の制限や、支援を求める市民への攻撃を非難。ガザ南部ラファの廃虚に「人道都市」を建設しガザ住民を収容するイスラエルの計画は「受け入れられない」とした。ハマス拘束下の人質の無条件解放も要求した。

 イスラエルメディアによると、同国軍による20日の攻撃のほとんどはデールバラハに集中し、三つのモスク(イスラム教礼拝所)が破壊された。国連人道問題調整室(OCHA)によると、デールバラハでは20日以降、少なくとも千家族が避難を強いられた。’

 パレスチナ通信は22日、イスラエル軍がガザ北部ガザ市のシャディ難民キャンプ北部で避難者らのテントを空爆し14人が死亡したと報じた。軍は軍事区域「ネツァリム回廊」近くで人道物資を待っていた市民を攻撃し、7人が亡くなった。


下記の阿部さんの【視標】の指摘も重い。子どもはどのような咎を受けて犠牲とならねばならないのだろうか。「生まれる」こと自体明日への希望であるはずにもかかわらず、死へ向かわなけらばならない理不尽を許すことはできない。しかし、政治はそれを拒む。


7月23日 【視標】 子どもの自殺率、救済強化を

東京都立大教授 阿部 彩

 国連児童基金(ユニセフ)による先進・新興国43力国の子どもの幸福度調査が5月に公表された。日本は身体的健康は1位だが、精神的健康は32位、学力・社会的スキルは12位で、順位は前回からさほど変わっていない。総合順位は14位で、身体的健康は優等生、精神的健康は低く、スキ ルでは中間と言える。

 浮き彫りになったのは、格差の拡大と分布の底辺にいる子どもたちの状況だ。自殺に追い込まれる子どもや、肥満・痩せすぎの子ども、親の経済的資源が少ない層の学力など、一番厳しい状況に置かれている子どもが増えている。「平均的な」子ども、「すべての」子どもを念頭においた政策だけではなく、厳しい状況の子どもを救うという観点の子ども政策をもっと強化する必要がある。

 精神的健康は「生活満足度」に関する割合と自殺率で測られている。今回「生活満足度」は若干改善したが、いまだに低い。

 自殺率は、そもそも高い値であるのに、前回から最も増加幅が大きく、上から4番目の高さとなっている。自殺率は最も深刻で、危機的な精神状況の現れである。

 国の調査でも、増加傾向は2024年も続いており、過去最多となった。増加は中学生以下の年齢層にも見られる。特に増加が顕著なのが、19年から20年で、コロナ禍の影響がある可能性が高いことは否めない。しかし、コロナ禍の直接的な影響(休校や行動変容など)がほぼなくなった24年においても、子どもの自殺率が高水準で、かつ増加している。

 何が子どもをそこまで追いつめているのか。学校のあり方や大学受験、就職までの競争なども含め原因究明と支援策の強化が早急に求められる。

 身体的健康では、子どもの死亡率、肥満率ともに日本は低いため、ランキングは1位である。だが、日本においては、肥満と同様に懸念される のが「やせ」の問題だ。

 学校保健統計でも、5歳から17歳で、痩せすぎ、肥満の割合が過去最高となっている年齢が目立つ。健康的な体重の子どもが減り、両端の子ど もが増えている。ランキングが1位だと喜んでばかりはいられないのだ。

 学カスキルは、38力国のうち21力国で悪化、世界的にコロナ禍の前後において子どもの学力低下だ顕著となった。日本は基礎的習熟度に達して いる割合がほぼ横ばいで、一見すると安心材料と見られるかもしれない。

 しかし、18年から22年にかけて、親の経済状況による学力格差の変化を見ると、日本は上から8番目に大きな値となっている。

 すなわち、平均的な学カスキルについては優良であるが、学力格差が拡大している。学力格差の底辺の子どもにより手厚い教育を施す施策が求められる。

 社会的スキルでは、「学校で友だちをつくるのは簡単」と答えた15歳の子どもの割合で、日本はデータが存在する41力国中30位と懸念すべき状 況にある。この分野では、日本の順位が高い学カスキルと順位が低い社会的スキルの平均となっているため、社会的スキルの低さが注目されることが少ない。

 しかし、友人関係は精神的健康とも強く関連する項目であり、「日本人はシャイ」とばかり言っていられない。前回から改善が見られており、 その点は喜ばしいことであるが、依然として課題が大きい項目と言えよう。



7月23日 【インサイド】 関電社長「電力需要伸びる」

 関西電力の森望社長は22日、美浜原発(福井県美浜町)敷地内で原発建て替えを視野に調査を始めることを表明した。2011年の福島第1原発事故後、原発の新設に向けた動きは全国初。データセンターの急増などで電力需要が増大し続ける将来予測と国のエネルギー政策を受け、日本の原子力事業を前進させる一歩を踏み出す。

 「データセンターや半導体の急成長と、産業自体の電化で電力需要は伸びる。資源が乏しい日本に原子力は必要不可欠で、新増設や建て替えを進めなければならない」

 森社長は大阪市の本社で開いた記者会見で、調査着手の意義を強調した。政府が2月に閣議決定したエネルギー基本計画で原発の維持を明記したことも経営判断に作用した。国内で14基稼働する原発のうち半数の7基を動かす原子力事業の先頭ランナーとして、使命感もにじませた。

 国の認可法人「電力広域的運営推進機関」によると、2050年の電力需要は最大1兆2500億キロワットで19年度から4割増えると予測する。大量の電力を消費するデータセンターなどが主な要因とされ、関電も京都府精華町で大型データセンターを建設する。

 同基本計画では、40年度の電源構成で原子力発電を23年度の8・5%から約20%に増やす見通しを示した。だが全国では現在、原発の老朽化が進む。森社長は建設時期を「今回の調査だけで建設を判断する訳ではなく、示すのは難しい」としっつ、「できるだけ建設期間は短くしたい」と本音ものぞかせた。

 一方、原発事故に対する地域住民らの不安は心も根強く、建設までは紆余曲折も予想される。国が定める原発30記論圏内の緊急防護措置区域(UPZ)には、立地する福井県だけでなく隣接の長浜市や高島市なども入り、万一の事故時に備えた僻難対策などが超長期的に必要になる。

 森社長は「原子力は安全を最優先する。国民や地域に説明を積み重ねるしかない」と繰り返した。長期に及ぶ原発の建設事業や運転が経営に与える影響は大きく、「エネルギー政策を一貫して進めてほしいというのが願いだ」と国に訴えた。


電力需要が増す、というのが大きな理由なのだが果たしてそのんな必要があるのか。右肩上がりの経済(GDP)を追求する限りいつになっても問題は解決しないのではないかと思う。電力の地産地消で賄えるだけの経済活動が必要な時期に来ている。GDPと人間が心中ことになってしまってはいけない。


7月22日 参院選 日本で「極右」台頭と注目

 参院選で自民、公明両党が大敗したことを受け、主要各国から日本の政治が不安定化することを懸念する声が上がった。「日本人ファースト」を掲げる参政党が支持を広げたことに注目が集まり、フランスメディアは排外主義的な「極右」が台頭したと報じた。

 米国務省は20日、「日米同盟はインド太平洋と世界における平和と安全、繁栄の礎だ」とコメントした。米国では昨年の衆院選に続き敗北した石破茂首相に対し、態勢立て直しは難しいとの分析もある。高関税を巡る日米交渉の期限が8月1日に迫り、米メディアは期限前の合意はさらに難しくなったと解説した。

 中国外務省報道官は「建設的で安定した中日関係を構築していきたい」とした。21日付の中国共産党系の環球時報は、日本の政治が「かってない局面にある」と指摘。参政党の勢いを大きく取り上げ、排外主義の世論が高まったとする識者のコメントを伝えた。

 韓国の聯合ニュースは、日韓を取り巻く国際情勢が変わらないため両国関係への影響は限定的だとの専門家の意見を紹介。保守系紙、朝鮮日報は、参政党について「反外国人『日本人ファースト』の突風」との記事で、偽情報も発信しながら躍進したと指摘した。

 フランスのルモンド紙は「極右の新党、参政党が今回の選挙でポピュリスム的な扇動役となり、排外主義的な政策を掲げて歴史的な得票率を記録した」と報じた。

 ロシアメディアは自民党から比例代表で立候補した鈴木宗男氏の当選確実を相次ぎ報道。「ロシアとの関係強化を主張する人物」と紹介した。  (共同)


英BBC「極右躍進」

【ロンドン共同】英BBC放送は21日までに、日本の参院選で参政党が支持を広げたことに関し「日本人ファーストの極右政党が躍進」と報じた。「移民やオーバーツーリズムヘ不安の増幅を反映している」と分析した。

 BBCは、日本政府が高齢化に対応しようと働き手となる外国人の受け入れ規制を緩和し、国民の不満につながったと指摘。移民が犯罪や物価高の増加を招いていると感じる国民もいるとした。「参政党の台頭は、日本の政局の転換を象徴している可能性がある」とも報じた。



7月21日 参院選 無党派層11%、参政に

 共同通信社は参院選で全国の有権者に対し、投票した候補者や政党を質問する出口調査を実施した。新興の参政党の得票傾向や、自民、公明両党支持層の動向を分析。物価高対策の影響や年代・男女別の投票行動なども探った。

 共同通信出口調査で、比例代表で参政党に投票したと回答した人を政党支持層別に分析すると「支持する政党はない」と答えた無党派層で11%に上った。国民民主党15%、立憲民主党13%、自民党12%に続く4番目の支持だった。自民支持層の4%、国民民主と日本維新の会のそれぞれ3%、立民の2%の支持も得た。年代別では、30代と40代で全政党中トップの勢いを見せた。他党の支持層を取り込んだ上で、無党派層の得票を伸ばした実態が浮かび上がった。

 「日本人ファースト」を掲げた参政は「排外主義的」と批判されつつ、神谷宗幣代表らの主張が注目を集めた。交流サイト(SNS)の発信にも熱心で、無党派層に支持が広がったとみられ、参政支持層は85%が投票した。

 年代別では、若年層(30代以下)と中年層(40〜50代)で参政への投票割合が高かった。10代(23%)と20代(22%)は国民民主に次ぐ2番目で、30代は22%、40代は18%の支持を集めた。50代(15%)も自民に次ぐ2番目を記録、60代が11%、70歳以上が5%だった。

 男女別で見ると、参政に投票したとの回答は男性16%に対し、女性12%だった。選挙戦では、神谷氏が街頭演説で「高齢の女性は子どもを産めない」と主張し、女性団体などからの抗議が相次いでいた。

 調査に答えた人全員に支持政党を尋ね、参政と回答したのは、年代別では10代、20代、30代がそれぞれ19%。40代は15%、50代は2%、60代は8%で、70歳以上は4%だった。男女別では男性13%、女性10%だった。


自民に投票 高年齢偏り

 共同通信出口調査を分析すると、比例代表で自民党に投票したと回答した人の割合が高年齢層に偏っていることが判明した。50代、60代、70歳以上ではトップだったが、若年層(30代以下)では国民民主党や参政党に後れを取った。30代と40代は参政、20代以下は国民民主が最多だった。全世代を通じた合計では自民21%、参政14%、立憲民主党12%、国民民主12%の順だった。 


今回の選挙では参政党の躍進が目を引く。かつて日本維新会が躍進した時に維新をポピュリズム政党と定義する議論が多かった。確かに維新はポピュリスト的ではあったが、今回の参政党は欧州でのポピュリズムと共振するところが多い。自民党の支持者が高齢者の多いとの分析と同様の傾向が立憲民主党にもみられる。これを単に「世代間の分断」と表現するだけでは済まないだろう。おそらく、これまでの左派、右派という枠組みが機能しなくなったことを示しているように見える。ナチュラリスト(自然派)はナショナリスト(国家主義派)という構図が生まれたということだろう。ちょうど、日本の経済が疲弊していた戦前の農本主義者がファシズムに傾斜していくのと酷似しているように見える。自民、立民、公明、共産という経済成長を支えてきた政党が顧みなかった「氷河期世代」の人たちからの反乱でもあるだろう。また、組織労働者の権利擁護に重点を置いた労働組合の活動も批判のされていると受け止めるべきだ。左派、右派を超えた社会の姿をエスタブリッシュメントの政党は示さなければならな。


7月21日 ガザ イスラエル軍 侵攻拡大か

【エルサレム共同】パレスチナ自治区ガザに侵攻するイスラエル軍は20日、ガザ中部デールバラハ西側の一部住民に退避通告を出した。イスラエルメディアは、同国軍が周辺地域で地上侵攻を拡大する計画だと報じた。停戦交渉が続く中、イスラム組織ハマスに一段と圧力を強めた。

 イスラエルメディアによると、ガザ中部全域には推計35万人が暮らす。退避先に指定された南部ハンユニス西方マワシ地区には既にテント暮らしを強いられた住民が多く、混乱は必至だ。ハマスに拘束されているイスラエル人の人質の家族は、侵攻拡大が人質の命を危険にさらす恐れがあると強い懸念を示した。

 ガザ保健当局は20日、食料配給拠点などでの死者が922人になったと発表した。米イスラエル主導の配給拠点周辺では、イスラエル軍の発砲による死傷者が続出している。

 パレスチナ通信によると北部ガザ市で20日、支援物資を待っていた住民に対し、イスラエル軍による攻撃があった。ガザ保健当局は、支援物資に絡む死者が北部で67人、全域では計73人に上ったと発表した。922人に含まれているかは不明。報道によると、19日には、最南部ラフアなどの配給拠点周辺で36人が死亡した。イスラエル軍はラファでの銃撃に関し、拠点から1キロ離れた部隊に接近した数人への威嚇射撃だったと主張した。

 中東メディアによると、デールバラハで20日、4歳の女児が栄養失調で死亡した。

 北部ガザ市でも19日、生後35日の新生児ら2人が栄養失調で死亡。イスラエルはガザヘの支援物資搬入を大幅に制限しており、人道危機は悪化の一途をたどる。


国連報告SDGs進捗「遅れている」

【ニューヨーク共同】国連は2030年までの達成を目指す「持続可能な開発目標(SDGs)」の進捗について「達成もしくは順調」と判断できるのは18%にとどまるとする報告書を公表し「大きく遅れている」と危機感を示した。グテレス事務総長は「揺るぎない意思を持ち、直ちに団結すれば達成可能だ」と各国に呼びかけた。

 今回の報告書で十分にデータがあり、評価可能だったのは全169項目のうち139。「達成もしくは順調」に「ゆるやかな前進」を加えても計35%だった。18%が「後退」と判断された。

 評価方法が一部変更されたが、昨年は「達成もしくは順調」が17%、「後退」も17%だった。

 ニューヨークの国連本部で記者会見したグテレス氏は、女子教育の改善やインターネット利用者の増加、再生可能エネルギーの普及などに進展があったと強調した。一方で「極度の貧困で生きる人は8億人を超え、気候変動の影響も深刻化している」と指摘。紛争とSDGsも関係があるとし、パレスチナ自治区ガザやウクライナでの停戦の必要性を訴えた。

 気候変動対策などに後ろ向きなトランプ米政権に対して「再生可能エネルギーが支配的な役割を担うのは不可逆的な流れだ」とけん制した。

 SDGsは持続可能で多様性のある社会の実現を目指し15年に採択された。貧困と飢餓の撲滅、教育普及、ジェンダー平等など17分野で計69項目の目標を掲げている。


『人新生の「資本論」』で斎藤幸平氏は「SDGsは大衆のアヘンだ」と刺激的なメッセージを発した。庶民の細々とした環境保護などのSDGsの取組を否定するかのようなものに見えた。しかし、そうした取り組みを一蹴してしまうような戦争を世界は経験している。ロシアのウクライナ攻撃、アメリカのウクライナへの武器供与、イスラエルの近隣諸国へ空爆、ガザでの虐殺。すべてSDGsの取組に反している。あえて、SDGsを一層進めようと訴えざるを得ない。


7月20日 【教育】 滋賀県立高に「新しい普通科」開設

 画一的な普通科の教育内容、学ぶ意欲が低い―。こんな課題を踏まえた国の普通科改革により、地域や学際的な学びなど取り入れた「新しい普通科」の設置が可能となった。滋賀県立高では、新しい普通科が本年度、伊香高(長浜市木之本町)と守山北高(守山市)にそれぞれ誕生した。新学科が船出して3ヵ月余り。「普通科といっても、普通じやない」。現場にはゼロから新たな学びを構築しようと試行錯誤する姿があった。(生田和史)


伊香高全国募集へ地元も協力

 「C層は石が多いな」。6月上旬、伊香高の新しい普通科「森の探究科」1期生は、高校の裏山にいた。地層の断面をスコップですくい、採取した土を容器に移し、土の状態を手で触れて観察した。土の成分や色、生息する生物の違いが層によって異なることを確かめた。

 授業は新学科の学校設定科目「森のキホン」の土壌調査の一場面。同学科は、一般教科を主としつつも、森林や自然の学びを特徴とする。この科目では1年間通じて森林に関する知識や技能を実習する。

 1年安藤侑さん(15)は「授業はフィールドワークが多くて楽しい」と笑顔を見せた。地元の生徒が多くを占める中、大津市から片道2時間かけて通学する。「幼少期からクワガタやカブトムシが好きで、森も学べる。『これだ』と思い志願した」。高校では昆虫について探究し、大学でも引き続き知識を深めるつもりだ。同科長を務める富山昌彦教諭(38)は「自然や生き物が好きで、それを学びたいと思う目的意識が高い生徒が来てくれた。活動も意欲的だ。滑り出しは上々だ」と手応えを語る。

 2年では、持続可能な社会に向けて再生可能エネルギーや森林資源の活用方法などを習得し、3年では、各生徒が興味や関心を寄せるテーマを探究的に学び、リポート発表する。林業従事者を養成するための学科と思われがちだが、環境、エネルギー、防災、生物など学びの幅は広い。就職や総合型選抜での大学進学などさまざまな進路を想定する。

 生徒の探究心をくすぐる学びは、受け入れる学校側は教育プログラムを作り上げる難しさがある。臨時教諭として指導に携わる大久保卓也滋賀県立大名誉教授は「授業準備が通常の倍かかる。教科書も学習指導要領もない。文献を調べて教材を作らなければいけない」と労苦を語る。富山教諭も「各授業の内容にどう関連を持たせるか」に頭を悩ませている。

 学びの主なフィールドが自然ゆえに、雨天で校外活動が中止になることもある。その時期にしか出会えない動植物もあるが、授業の計画が想定通りに進まなくなる懸念もある。

 来年度から5人枠で全国募集を始めるのを前に、地元の協力を得て、学校近くの古民家を改修した下宿を整備した。現在、県南部出身の2人の生徒が入居する。朝夕の食事づくりは、地域住民約30人のチームが担う。

 臼井正士校長は「本校は、建学の精神『三萬一心』にあるように旧伊香郡3万人が資金を出すなどして誘致した。地域の応援に応えるのは使命。定員充足を目指したい」と語る。


守山北高行政や企業と連携模索

 守山市の旧中山道守山宿周辺を守山北高の新しい普通科「みらい共創科」の生徒が5月に散策し、江戸時代に宿場町として栄えた名残や現在の特徴を探した。同科は地域が学びの舞台で、今回の授業は学びの柱の一つであるフィールドワークの練習だ。

 生徒は4グループに分かれ、気になった風景を写真撮影したり、地元の人に話を聞いたりした。1年深草亜実さん(15)は、中山道街道文化交流館で聞いた「京立ち守山泊まり」の解説が印象に残ったとして、「知らないことがいっぱいだった」と楽しそうだった。同学科の志望理由は「正解のない問いに挑むのが面白そうだった」と言う。振り返りの授業では模造紙に付箋を貼って、似通った要素をグループ化する手法を用いて、情報共有や解決策の出し方を学んだ。

 円滑な対人関係に必要な「ソーシャルスキル」の習得も新学科の特徴の一つだ。1クラスで3年間同じ顔ぶれで過ごすためにも重要で、地域住民や企業、行政関係者との関わりにも生かすことができる。

 2学期からは、フィールドワークが本格化する。市内にある県内最大規模の弥生時代中期の環濠集落「下之郷遺跡」をPRするイベントや、JR 守山駅前で催されるイルミネーションイベント「もりやま冬ホタル」の企画にも携わる。3年時に、個人が課題を設定して行政や企業に解決策を提案するのが最終目標だ。

 杉原真也校長は「1期生はチャレンジの連続だ。この挑戦が2期、3期と生かされ、引き継がれる。1期生の卒業後が一つの完成形となる」と見通す。


京都での進学を目的とした学科(堀川高校探究学科群、西京高校エンタープライジング科、嵯峨野高校こすもす科)の設置とは異なる「普通科」の展開に注目しておきたい。どちらも地域との連携が重要な要素のようだが、学校側の下請けとして地域が利用されるだけではもったいない。どうのような連携が可能化も今後の展開に期待したい。


7月20日 久御山町 子ども拠点整備、住民と

 久御山町の御牧校区に町が整備する、子どもの居場所となる拠点「みまきっこまんなか応援村」。拠点の設計に向けて住民の要望を聞き取り、PRのために試験的なイベントを実施するなど、2027年の「開村」に向けて町民を巻き込んだ準備が進んでいる。現状を取材した。(森田明理)

 「全国一番の子育て環境のまちづくり」を掲げる同町では、重点事業の一つとして子どもの居場所づくりを挙げる。モデルケースとして選ばれたのが、町内3校区のうち、子育て支援施設や多世代が交流できる場がない御牧校区だった。

 拠点では、子どもの声を反映するための組織「みまきっこ自治会」(仮称)を、子どもたちが運営することを目指す。遊びや学びを通じて多世 代交流ができる寺子屋塾、地域資源を生かした移動式遊び場「プレイバス」、あらゆる世代で地産地消の食事を楽しむ「みんな食堂」など、構想は膨らんでいる。

 今年2月には、開村準備をともに行う団体が決定。佐山校区で子どもの居場所作りに取り組んでいるNPO法人「ひと・まち・ジャンクション」 (同町西一口)が公募により選ばれ、協定を結んだ。オープンまでの期間中にイベントを開くなど、運営のあり方をサポートしていく。「地域住民との橋渡し役などソフト面での力強い協力者になる」と子育て支援課の佐野美奈課長は話す。

 一方、拠点の建設に向けたハード面の準備も動き始めている。3月、京都工芸繊維大の特任教授金野千恵さん(44)の設計事務所「teco」(東京都)が、設計や建設工事の管理を行う事業者に選ばれ、町と業務委託契約を締結した。委託内容には拠点の設計だけでなく、基本計画の策定や設計に向けた町民との対話、トライアルイベンドの実施も含まれている。

 金野さんは指導する学生らと御牧地区内を巡り、住民にヒアリング。7月上旬には、ワークショップ「こどもまんなかカフェ」を町役場で開いた。10代から高齢者まで25人が参加。これまで町で起きたことや、これから町でやってみたいことを話合い年表にした。参加した同町林の会社員安原美和さん(50)は、4人の子育て経験を振り返り「子どもたちが天候に関係なく遊べる空間が必要。保護者同士が相談できる場にもなればいい」と話した。

 金野さんは「設計の方向性を決めるキーワードが見えてきた。一人一人が主体となり楽しんでもらえる場にしたい」と意気込む。8月末には基本計画が完成する見込みで、9月に開かれる町議会で報告する。

 町は、住民と一緒に拠点を作り上げる点に重点を置く。事業を応援するサポーターを募集し、町内外から15人が参加。31日には、トライアルイ ベントとして「水かけまつり」を御牧小で開催する。「多くの人に取り組みを知ってもらい、開村後にスムーズな運営ができるように基盤をつくることが大切」と佐野課長は強調する。

 町は今後も2ヵ月に1度ほどのペースでイベントを開く予定だ。町内での周知を進め、幅広い世代の意見を拠点整備にどうつなげるかが問われて いる 


大都市近郊の自治体の取組として評価できる。近郊都市の昼間人口の減少は一つの過疎化といえるかもしれない。政府は地域力の創造・地方再生のために「関係人口1000万人創出」をあげているが、夜間人口と昼間人口の差をどう埋めるかも必要な論点。職住近接、地産地消へのアプローチにつながる可能性を秘めた取り組みだが今後の展開次第だろう。


7月20日 立命館 立命館憲章改正案に反発

 立命館大などを運営する学校法人立命館(京都市中京区)が、学園全体の方向性を示す「立命館憲章」から戦争の教訓などを踏まえた記述を削除した改正案をまとめ、学生や教職員の一部が反発している。学生らは「戦後80年の節目になぜ過去の歴史と向き合わないような変更をするのか」と批判。同法人は今月中の正式決定を見送る方針を19日までに決めた。

 憲章は教育・研究活動の根幹とする理念や精神を明文化する目的で2006年に制定された。同法人は24年7月、「社会や世界のために真に貢 献する」姿勢を内外に示すためとして、改正に向けた検討委員会を設置。一部の学生・生徒、外部有識者らから意見を聴取した上で改正案を策定し、今年4月に学内向けのポータルサイトに掲載した。

 改正案は、新たな時代における「未来志向」を重視し、留学生も理解しやすい表現に務めたという。その一方で、現行憲章に明記されていた 「戦争の痛苦の体験を踏まえて」「自主、民主、公正、公開、非暴力」といった文言が削除された。

 これに対し、反発する学生らは有志の会をつくり、改正案見直しを求め、学内外にオンラインで署名を呼びかけた。今月10日、会は集まった 1万7595人分の署名を法人本部に提出した。メンバーの女子大学院生(24)は「改正案の中身は歴史修正主義とも映る。戦争の痛苦への反省を忘れてはいけない」と語気を強めた。

 憲章が制定された背景には戦時中、京都御所を守る「立命館禁衛隊」として学生が戦争に動員され、学内には国防学研究所が設立された経緯がある。戦後、立命大は建物の封鎖・破壊、暴力行為が常態化するなど、ひときわ激しい大学紛争を経験した過去もあり、学生らは「現行の憲章は平和と民主主義を教育理念に掲げてきた。これは立命館にとって欠かすことはできない」などと訴える。

 同法人は堂内に向け、「憲章は時代の潮流に合わせて変えていくべきもの」と理解を求め、今月の理事会で新しい憲章を決定し、10月の立命館 創125周年記念式典で公表を予定していた。しかし反対の声を受け、平和と民主主義を尊重する姿勢は不変で「現行の憲章を否定するもの、ではない」と釈明しながらも、「丁寧な議論が必要」と判断。今後は期限を設けずに憲章について学内から意見を募る方針を決定した。

 立命大教職員組合は現行の憲章制定時は全学的な議論があったと指摘し、学生や教職員の意見を踏まえ、「少なくとも同じ検討の手続きは踏むべきで、改正の理由も丁寧に説明すべき」と指摘する。


立命館理事会らしい判断だが、建学の精神とはかけ離れたものとなってしまっている。私学の経営が難しい状況の中でいわば「優良企業」としての立命館。憲章の内容だけではなく経営方針の転換を狙うものか。


7月19日 【論考】 恐れや怯えが加害性に

朱喜哲(哲学者)

 大きな選挙が続く夏だ。6月の東京都議選では、一部の候補による外国人への攻撃的な主張が目立った。トランプ大統領の米国が移民への圧力を強めるように、世界に広がる排外主義的な動きは、日本社会でもその存在感を増している。

  日本は働き手不足

 急激な人口減少による深刻な働き手不足に陥っている日本が、社会を維持していくためにも、外国出身者が必要であることは言うまでもない。多くの人が飲食店やコンビニエンスストア、あるいは介護施設などで日々それは実感しているはずだ。また、空前のインバウンド(訪日客)の増加は、特に観光都市では目の前にある現実だろう。

 日常的に接する機会が増えるからこそ、つい「外国人」を意識し、場合によっては不安が働くのかもしれない。しかし、少なくとも第2次世界大戦以降、外国人を排除しようという排外主義は社会を破壊しかねない危険なものだと考えられてきたはずだ。

 こういうとき、自分たちのことを客観視するのは難しい。だからこそ、世界の動向に目を転じてみるのは有効だろう。

  イスラエルの行動

 例えばパレスチナ自治区ガザでは、イスラエルによる民間人虐殺としか言いようがない蛮行が、もう1年半以上も続いている。なぜこんなことがまかり通るのか。突然のイラン攻撃など、世界秩序を揺るがすイスラエルの攻撃性、残虐さは何に由来するのだろうか。

 同国の社会心理学者ダニエル・バルタルによれば、それはイスラエル社会が抱える「ホロコースト」(ユダヤ人大量虐殺)のトラウマ的記憶であり、「被害者意識」なのだという。自分たちは被害者で、虐げられており、奪われているという「恐れ」や「おびえ」が、第三者には信じがたい加害性の源泉となってしまう。イスラエル政府は、国民を不安の渦中に置き続けることによって、体制を維持しようとしている。

 排外主義の恐ろしさは、攻撃的な振る舞い自体もさることながら、それが被害者意識として防衛的に発露される点にある。ゆえに排外主義は社 会にとって「やむをえない」ものになり、一度駆動し始めると、その残虐性に歯止めがかからなくなってしまう。

  3%は脅威なのか

 冷静に確認しなくてはならないのは、端的な統計的事実だ。日本の総人口は1億2千万人余りで、そのうち「外国人」は35O万人ほど。人口 のたった3%未満に過ぎない。そして「外国人」の内訳を在留資格で見ると、永住者や定住者、特別氷住者が合わせて4割を占める。日本に根ざして生きていたり、日本にルーツを持っていたりする人々だ。

 他の在留資格には「技能実習」「特定技能」「高度専門職」といったものが挙がる。日本の「外国人」の多くは、この地で働き、また、納税する市民なのだ。

 人口の3%にも満たず、出自や言語によって分かれ、この社会で「外国人」と名指されながら日々を生きる市民たちが、大多数の「日本人」の生活を左右する脅威や、危害を加えるような集団になりえるのだろうか。

 あるいは、現役の働き手として既に欠かせないという事情を無視し、もともと権利上の制限があるこの約3%を締め出したとして、残り約97% の生活はどれほど向上するだろうか。

 繰り返すが、外国人も一人の労働者であり、また納税者だ。この社会のインフラを支え、何とか回していく成員の一人なのだ。私たちの社会には、味方と敵がいるわけではない。誰もが社会の中でなければ生きられない弱さを抱え、だからこそ共に生きてい る。

 他者と共に生きることは、たとえ国籍や言語が同じだとしても、やはり緊張感を伴う。誰しも、身近な場所になじみのない人がいて、その気配を 感じながら過ごすのは快適ではない。だが、外国人かどうかを問わず、自ら以外の人と空間を共有することは、社会を営む上で避けられない。

 ごく少数の集団への憎悪や嫌悪をあおり、一時の留飲を下げるために行動することは、あなたの生活を、私たちの社会を少しでも上向きなもの にするだろうか。「外国人」には認められない権利を行使する際は、そのことを考えてほしいと願っている。     


この論考から1923年の関東大震災での朝鮮人虐殺事件を想起せざるを得ない。その後日本はクデータ未遂事件をはじめとして坂道を転がるように、15年戦争(1931年柳条湖事件勃発から1945年ポツダム宣言受諾)に突き進んでいった。排外主義の結果だった。


7月19日 【解説】 美浜敷地内に原発建設検討

 関西電力美浜原発では、古い原発を廃炉にし、新たな原発を建設する計画を2010年から進めてきた。だが11年の東京電力福島第1原発事故を受け、政府が「原発依存度を低減する」と方針を決めたことで、頓挫していた。

 この方針は、今年2月決定の「第7次エネルギー基本計画」で転換され、「原子力を最大限活用していくことが極めて重要」と明記。美浜原発での新たな建設計画を後押ししたとみられる。

 これまで原発の建て替えは同じ敷地内に限っていたが、第7次基本計画では同じ電力会社が保有する別の原発敷地で行うことを容認した。九州電力も、佐賀県の玄海原発で2基を廃炉にし、鹿児島県の川内原発で建て替えを行うことを念頭に置いているとみられる。

 電力需要は、データセンターの増設や生成人工知能(AI)の普及で今後、増加が見込まれる。世界が気候変動対策として脱化石燃料に動く中、発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない原発への期待も高まる。一方、欧米では建設費の高騰や建設期間の長期化もあり、建設が思うように進ん でいないのも実情だ。


地元関係者「期待していただけに、驚いた」

 関西電力が美浜原発の敷地内で地質などの調査を本格検討していることが明らかになった18日、原発の立地する福井県美浜町関係者からは驚きの声が上がりた。

 町内では、2011年3月の東京電力福島第1原発事故以降、1、2号機が廃炉に。経済の停滞から新増設を望む声は、一部で高まっていた。今年2月には原発の新増設を推進することなどを示した第7次エネルギー基本計画が閣議決定されたばかり。ある町議は「そろそろ動き始めるのではないかと期 待していただけに、驚いた」と声を上げた。


政府は次世代型原発(「革新軽水炉」、小型モジュール炉(SMR)、高速炉、高温ガス炉など)への建て替えを推進する方向だ。いずれにしても放射性廃棄物を生むことに違いはない。六ヶ所村の核燃料サイクル施設の稼働は、1993年の着工から原子力規制員会から26回もの問題点が指摘され延期、延期の連続となり、現在では2026年の完成を目指している。しかし、最終処分地をどこにするのかは全く見通せない中での「再処理」である。「核のゴミ」問題を置き去りにした原発の新設は許されない。1970年に美浜1号機が稼働(現在は廃炉が決まっている)してから55年になるが、その間どういった自治体にするのかという議論はなされず「原発依存」を強めてきただけ。地方再生をあげる政府は「依存」からの脱却を論じる義務があるだろう。


7月17日 財務省vs文科省 「高等教育の質」巡り対立

 私学助成を受ける私立大に「高等教育にふさわしい教育の質向上」を求めた財務省に対し、文部科学省は「学び直しで基礎を固めることで、地域の中核人材の養成を担っている」と批判する。

 財務省は4月15日の財政制度等審議会の分科会に提出した資料の中で、少子化なのに大学数が増え「2016年度以降の新設大学の約7割が定員割れ」「定員割れの私立大の中には義務教育で学ぶような内容の授業をしている」と指摘。具体例として、数学で四則計算や約数・倍数、方程式・不等式を教えていることなどを挙げた。

 その上で@高等教育にふさわしい教育をしているかA社会に求められる人材を育成しているか―といった観点による認証評価制度を活用し、助成額のめりはりを強化するべきだと主張した。

 これを受け文科省は同月24日、私立大の在り方を検討する識者会議に反論資料を提出した。

 この中で@財務省指摘の定員割れ率は1人でも定員を下回った大学の割合A学び直しは高等教育への円滑な導入のため学生の実態を踏まえ体系的に実施B学生確保が困難な大学でも地域に不可欠なエッセンシャルワーカーや中核人材の養成を担っている場合も多い―などと反論した。


桜美林大・芹沢名誉教授記憶教育の犠牲者救う

 「定員割れの私立大で四則演算など義務教育で学ぶ内容の授業をしている」。財務省が4月、一部私立大の教育内容を問題視し、私学助成の見直しを求めた。これに対し、大学の授業で割合の概念といった算数・数学の基礎も教えてきた芳沢光雄桜美林大名誉教授(72)は「数学は積み上げの教科。暗記教育の犠牲者を救う必要がある」と反論する。

 東京理科大教授を経て、2007年に桜美林大教授になった芳沢さんは、割合問題や四則混合の計算問題が苦手な学生がいることに気付いた。ボランティア授業から始め、10年代半ばからは正規授業「数の基礎理解」で学生の学び直しに取り組んできた。

 苦手の原因は小中学校での教え方にあるとみる。「答えを出す『解き方』だけ教えて『考え方』を教えない。だから『解き方』を忘れると解けなくなる」と指摘する。

 例えば、割合を学ぶ小学校の授業では、公式に加えて「く・も・わ」の図形を使うことがある。「く」は比べられる量、「も」はもとの量、「わ」は割合で、割合を知りたい時は「わ」を隠して「く÷も」で計算するといった具合だ。割合の概念をあまり学んでいないから、この図形を忘れると解けなくなる。一方で割合問題は苦手でも、公式を覚えていれば解ける微分・積分問題は得意な学生は多いという。

 「実は割合の概念を理解させるのは難しい」と芳沢さん。「教師の指導力が落ちているから手っ取り早く解き方だけ教えて終わり。小学校にも英語やコンピューターなどが加わり、じっくぴ教える余裕もない」と話し、教員養成の在り方や学習指導要領を見直すべきだと指摘する。

 授業を受けた学生からは「小学校から解き方の暗記ばかりしてきた。『考えて解き、論述する』ことは数学以外でも必要ということを学んだ」との感想が寄せられた。

 だから、私学助成に絡ませて大学での基礎教育に言及した財務省に異を唱える。「財務省に配慮にて学び直しの取り組みをやめる大学が出てくるかもしれない」と懸念し、「そうした学生は暗記教育の犠牲者。本当に理解することの喜びを教えて社会に送り出すのが大学の責務だ」と訴えた。


なんとも奇妙な議論。かつて、西村和雄らの『分数ができない大学生』(東洋経済新報社1999年)が話題になり「ゆとり教育」の見直しが声高に叫ばれた。今は、「割合のできない大学生」なのか。この間の文科省の教育はどんな成果を上げたのだろうか。一方の財務省は文教予算を削減することにだけ熱心で、教育を財政的に支えることを何も考えてこなかった。「どっちもどっち」とばかり白けてもいられない。


7月17日 「働かせたい改革」参院選公約に抗議

 参院選で一部の政党が残業時間の規制緩和につながる公約を掲げているとして、働き方改革を推進する企業や専門家らは16日、記者会見し「『働かせたい改革』だ」と抗議する緊急声明を発表した。緩和すれば「長時間労働による過労死などの弊害を容認する社会へと逆戻りする」と警鐘を鳴らした。

 働き方改革関連法は一般業種での時間外労働の上限を原則として月45時間、年360時間と定めている。参政党は「もっと仕事したいのにできない」という弊害があるとして上限規制の見直しを主張し、公明党も「働きたいときにもう少し働ける社会へ」と労働時間のルール見直しを掲げた。

 自民党は「個人の意欲と能力を最大限生かせる社会を実現するため『働きたい改革』を推進し、人手不足の解消に努める」と明記した。

 これに対し立憲民主、国民民主、共産3党は働き方改革を推進する立場。次の始業までに休息時間を設ける制度の義務化を唱えている。

 「ワーク・ライフバランス」の小室淑恵社長は「全ての人が安心して働くには働き方改革の前進が必要」と指摘した。(共同通信)


紙面での扱いは小さいが非常に大きな問題だと認識しなければならない。とりわけ、「もっと仕事したいのにできない」「働きたいときにもう少し働ける」という個人の意欲を規制緩和に横滑りさせるという考え方には合理性はない。なぜそうなのかが問われなければならないはずにもかかわらずだ。また、「人手不足の解消」とすることも問題含みである。デジタル化を進めようとする政府との整合性も疑われる。低賃金で過重労働の環境を改善することが必要であり、ワークシェアリングをも視野に入れた「働き方改革」を目指さなければならないはず。


7月17日 群星沖縄臨床研修センター PFAS心筋梗塞リスク

 有機フツ素化合物(PFAS)の一種「PFHxS」の血中濃度が高いと、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まる可能性があるとの研究成果を、群星沖縄臨床研修センター(沖縄県浦添市)がまとめた。同県で実施した約400人の血液検査を基にした統計分析から、動脈硬化を抑える善玉コレステロールの低下や、脂質異常症との関連性が示唆された。

 PFHxSは代表的なPFOAやPFOSと同様の性質を持ち、撥水剤や航空機用の泡消火剤などに使われてきた。欧米に比べて日本では健康影響の研究は進んでおらず、本格的な調査は珍しい。因果関係までは断定できていない。

 沖縄県の水質検査では、米軍施設周辺で高濃度のPFASが検出されており、研究チームは周辺住民の血中濃度も高いとみて調査。2021年9月から22年4月、米軍普天間飛行場(宜野湾市)にも近い浦添市にあるクリニックの一般外来患者らを対象にPFAS12種類の血中濃度を計測。体格指数(BMI)や高血圧などとの関連性を解析すると、PFHXSの血中濃度が高い人は善玉コレステロールの数値が低くなる傾向があった。

 調べた399人(平均年齢53・4歳)のPFHxSの血中濃度平均は血液1ミリリットル当たり7・07ナノグラム。日本では健康影響の判断指標がなく、比較できる調査も少ないが、20年度に環境省の調査が示した全国80人の国内平均値0・22ダナノグラムの約30倍だった。PFOAは同2・80ナノグラム、PFOSは同7・56ナノグラムで、同省調査の平均より高かった。

 米国の科学・工学・医学アカデミーが22年に示した医師向けガイドラインは、PFAS7種類の合計値が血液1ミリリットル当たり20ナノグラムを超えると、脂質異常症などのリスクが生じる恐れがあるとしている。今回の調査では約4割の164人が20ナノグラム以上に該当していた。

 今回は特定時点における集団データを分析する「横断研究」という手法で、PFASにさらされる前後の比較はできていない。対象者の生活環境や習慣なども反映できていないため、さらなる調査が必要だとしている。


【インサイド】健康への影響 不明点多く

 有機フッ素化合物(PFAS)は、一部で発がん性などが指摘されるが、どの程度の摂取で、どう健康に影響が出るかは不明確な部分が多い。国内では水質汚染などが表面化して水質基準が設定されたが、健康影響を判断する血中濃度の指標の検討は進まない。汚染が疑われる地域住民の調査など実態把握が急務だ。

 PFASは、水に溶けやすいが、自然界では分解されず長期に残留する。飲み水などから人体に入ると血液や肝臓に蓄積し、排出されて半減 するまでにも数年かかる。全国で水道水や地下水で汚染の広がりが明らかになり、健康への懸念が高まっている。だが国内では判断材料になる調査がほとんどないのが実情だ。

 浄水場汚染が発覚した岡山県吉備中央町では2024年、住民の不安の声を受け、全国初となる公費での血液検査を実施。希望した住民約7 00人の8割以上で、米学術機関の指標1ミリリットル当たり20ナノグラムを上回る値が出た。ただ血液検査だけで明確な健康影響は把握できなかった。1回の血液検査では将来にわたる影響の判断には限界もある。

 規制を巡っては課題もある。政府は、毒性などが指摘されたPFOSとPFOAは26年4月から水道法上の水質基準にして規制を強化する が、PFHxSは対象に含まれていない。PFHxSは、PFOSとPFOAとともに国内では製造・輸入が原則禁止されており、対応が異なっている。


2023年に米軍横田基地で23年に汚染水漏出(日経新聞)していたことが先日各紙で報道されていた。全国の水の汚染と米軍基地を直接結び付けることは尚早だが、沖縄での経過を見ればかなり高い因果関係があるように思える。国は早急に、自衛隊も含めて米軍基地周辺の住民の健康調査を行う必要がある。


7月16日 参院選 選挙でヘイトスピーチ許されず

弁護士 師岡 康子

 参院選では「外国人が優遇されている」「治安を悪化させている」といった、根拠のないデマが流され、外国人や外国にルーツを持つ人々を敵 視する排外主義が日本社会で拡大している。

 外国人は私たちと同じように納税し、社会保険料も支払っている。しかし、選挙権はなく、政党への寄付もできず、公務員になれる職種や地域も限定され、意見を表明する権利が極めて制限されている。生活保護や医療、年金制度などで優遇されている事実もない。

 入居や入店、就職における差別、ヘイトスピーチやヘイトクライムにより平穏な日常生活すら奪われているのが現実だ。

 「違法外国人」「不法滞在者」といった用語も問題だ。外国人という存在そのものが違法、犯罪者であるかのような偏見をあおる。国連は「非 正規」という表現を推奨している。

 実際、外国人による犯罪率が日本人より高いというデータはない。非正規滞在者は約7万人で、ピーク時より4分の1に減少している。「日本 人ファースト」とのスローガンも、外国人は二の次でいいという差別のメッセージを含み、排外主義につながる。

 排外主義をあおる言動は、外国人や外国ルーツの人々を沈黙させ、絶望させ、多民族が共生する社会を壊し、戦争へもつながる。こうした主張 がまん延する背景には、戦後日本が植民地主義への反省を十分にしないまま、戦後も外国人を「煮て食おうと焼いて食おうと自由」(法務官僚による1965年の著書)と、あくまでも管理の対象として扱ってきた歴史的経緯がある。

 この20年ほどで日本全体の経済力が落ちた上に、貧富の差が拡大したことも背景となっているだろう。生活に困窮して不満が募る中で、そのはけ口が政府や政策でなく、分かりやすい「外部の敵」として外国人へと向けられている。

 本来、政府、国会などは人種差別撤廃条約などに基づき、ヘイトスピーチをはじめとするあらゆる差別を禁止し、多民族多文化共生社会を築く義務を負っている。

 偏見が広がる今こそ、率先して差別や排外主義を公に批判し、選挙運動におけるヘイトスピーチは許されないこと、特に外国人「優遇」策な どはデマだと啓発・広報を徹底すべきだ。例えば川崎市はヘイトスピーチを条例で禁止した上、選挙運動でも対象との広報を市の交流サイト(SNS)を通じても行っている。

 全ての政党と候補者は、排外主義的なキャンペーンをやめ、こうした主義主張に反対する姿勢を明らかにしてほしい。

 必要なのは、誰もが取り残されないよう、外国人の基本的人権を保障する基本法や、包括的に差別を撤廃し、救済するための法制度だ。政府が 設置を進める外国人政策の「司令塔」となる組織は、規制のためでなく、共生社会を築く「司令塔」であるべきだ。

 今回の選挙は、日本社会がこのまま排外主義と分断への道に進むのか、共生社会へ進むのかを決める極めて大事なものだ。排外主義をあおる政 策や選挙運動に反対の声を上げ、誰もが差別されず平和に生きていける社会を共につくり上げていくために、貴重な一票を投じてほしい。(談)



7月16日 参院選 増える教育費 格差拡大も

 通常国会の議論を踏まえ、政府が拡充方針を示している高校授業料などをはじめとする教育無償化。20日投開票の参院選では、教育の機会均等に向け、各政党が教育費負担軽減策を打ち出している。しかし高校授業料無償化の導入から15年を経ても各家庭が支出する教育関連費は増え続け、私学志向の高まりで公立高は揺らいでいる。

 高校の授業料は本年度、所得制限が撤廃され、公立・私立を問わず一律に年間11万8800円が支給される。2026年4月からは、私立高校を対象に加算されている支援金の所得制限も撤廃し、全国の私立の授業料平均額45万7千円に引き上げられる方向だ。

 自民党は高校授業料の実質無償化、立憲民主党や公明党は高校授業料に加えて教材費などの支援を掲げる。日本維新の会は所得制限のない無償化、共産党は私立高の施設整備費も無償化対象にすべきとする。国民民主党は修学旅行費などを含めた高校までの教育費の完全無償化、れいわ新選組と社民党は、それぞれ大学院、大学までの無償化を訴えている。

 高校の学費は授業料以外にも教科書代や通学費が必要で、大学受験に向けて学習塾に通う生徒も多い。文部科学省が隔年で保護者に実施する学習費調査によると、授業料無償化が始まった10年度は年平均約39万3400円(公立高全日制)だった学習費総額が、23年度は約59万7700円(同)と約20万円増加した。制度の利用に所得制限が設けられたことが大きいが、塾など学校外活動費も増加した。再び所得制限がなくなり、高所得世帯が浮いた費用を塾や予備校に回せば、教育格差が広がるのではないかと指摘されている。

 公立高離れも懸念材料だ。24年度から段階的に所得制限のない授業料無償化で先行する大阪府では、25年度入試で府内公立高142校中、約半数の79校が定員割れした。3年連続で定員割れした高校を再編対象とする府立学校条例に基づき、17〜24年度で12校が閉校した。唯一の公立高がなくなった市町もある。

 「人ごとではない」。25年度入試で志願倍率が1倍を切った京都市内の府立高校長(55)は危機感を強める。冷房のない体育館、どれだけ掃除してもにおいが取れない和式トイレなど、自校は設備面で私立高に太刀打ちできないと考えるからだ。「快適な環境で学びたい中学生の気持ちを否定するつもりはない。府立高校のスケールメリットを生かして教育内容を良くしていかないと、大阪と同じことになる」

 全国知事会は今年4月、文科省に対し、公立高校への財政支援をより一層充実するよう求める緊急提言を行った。無償化により私立高の寡占化が進めば地域の高校教育の維持向上が図れなくなり、特に中山間地域で「地域社会そのものの衰退を招くことが懸念される」と指摘。都市部と 地方部では公立・私立の実情が異なるとして「居住地域に関わらず魅力ある学校を選択できるよう、柔軟で持続的な制度設計を」と求めている。(岡本早苗)



7月16日 参院選 男性の育児参加進める施策を

昭和女子大客員教授 白河桃子さん

 人口規模の大きな「団塊ジュニア世代」が50代になり、出産できる女性が減ったため、少子化を劇的に改善することは難しく、進行をどう緩やかにするかが課題です。

 そもそも、この国では子どもを育てること自体が困難です。賃金が上がらない中、育児のために共働きが必要ですが、男性の残業が多く、仕事、家事、育児の全てをせざるを得ない女性からは、攻略が極めて難しいゲームになぞらえて“無理ゲー”との声も上がります。

 男性も育児のために柔軟な働き方ができるようにし、労働時間を短くしなければいけません。企業は、最初から育児に参加できるよう育児休業を男性にしっかり取らせて、その後の両立制度も整えることが必要です。

 地方では若い女性が地元を離れる動きが続いています。女性がいなくなれば少子化が進み、行く末は自治体の消滅です。出て行く理由の多くは進学や就職ですが、地元から離れたかったとの意見も多い。地方では「親戚の集まりで食事の準備は女性の仕事」といった、固定的な男女の役割分担意識が東京よりあります。男女の賃金格差も都市部より大きい。ジェンダーギャップ(男女格差)解消が急務です。

 日本で少子化対策がうまくいかないのは、国の意思決定層が高齢男性ばかりで多様性がないことも一因だと思います。女性や若い世代をもっと参加させるべきです。

 諸外国は家族の定義を広げることで少子化対策に成功しています。選択的夫婦別姓が認められ、法律的には結婚していないカップルの子供でも子育て支援制度が使え、シングルマザーでも安心して産める。フランスで「産んでもなんとかなると思える社会」という言葉を聞きました。日本ではそう思えないのでしょう。(談)



7月15日 【インサイド】 学テ、揺らぐ全員参加根拠

 2025年度の全国学力テストから、それぞれが異なる問題を解くことで幅広い領域の学力調査が可能となる「IRT(項目反応理論)」の手法が採用された。文部科学省は全ての児童生徒に結果を返却し、各学校での指導に生かすことを理由に全員参加を維持してきたが、IRTでは半数以上の問題が非公開で、どんな問題をどう間違えたのか分からない。全員参加の根拠は揺らぐ。

 07年度に始まった全国学力テストは、学習指導要領が育成を目指す力を測り、政策や現場の学習指導の改善に役立てることを目的に掲げる。だが、都道府県別や学校別の平均正答率が出るため、過度な競争をあおり、学校現場にプレッシャーを与えているとの批判が根強い。

 「良い結果を維持すべきだとの空気が県全体にある」。高水準の平均正答率が続くある県の公立小に勤める男性教諭(27)は声を落とす。勤務校では直前になると授業2〜3こまを割いて対策問題を実施する。

 「国は比較のためのテストじゃないと言うが、正答率が出れば比べられる。学習内容が増える中で、さらに子どもたちを追い立てている」と憤る。

 こうしたケースは一部の自治体に限った話ではない。日教組の19年調査で事前対策していた小学校は9・4%、中学校は28・2%に上る。

 文科省は、今回の中3理科を皮切りに、国語、算数・数学、英語の全教科をオンラインで出題・解答する方式(CBT)に切り替え、IRTの手法を導入する方針を示している。そうなれば、今後はさらに非公開問題が増えることになる。

 中国地方の50代女性教諭は「問題も分からず、どうやって子どもにフィードバックするのか。もう全員参加の必要はないのでは」と疑問を呈するが、文科省は対象者の変更は考えていない。

 福岡教育大の川口俊明准教授(教育社会学)は、大規模な学力調査は児童生徒の指導のために行うものではなく「政策に役立てるもの」と指摘。続けるのであれば「政策に生かせるものにした方が良い。抽出調査にし、家庭の経済状況などのデータと結び付けられるようにするなど、制度設計を抜本的に見直すべきだ」と訴えた。



7月14日 全国学テ 中3数学正答率50%割れ

 文部科学省は14日、小学6年と中学3年の全員を対象に4月に実施した2025年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を公表した。中3数学の全国平均正答率(国公私立)は48・8%。難易度が異なるため単純比較はできないが、前回(53・0%)よりも下げて5割を切った。小6は国語67・0%、算数58・2%、中3国語67・6%。3年ぶり実施の理科は小6が57・3%だった。

 デジタル端末を使いオンラインで出題・解答する方式(CBT)を初めて導入した中3理科は、国際的な学力調査で採用される「IRT(項目反応理論)スコア」で示し、全国平均は505点だった。

 IRTスコアは各問題の難易度などから学力を推定し、500点を基準とする。生徒にはIRTスコアではなく、5段階の得点分布のどこに位置しているかが結果として返却される。

 中3理科は4日間の分散実施で、生徒は公開問題10問と非公開問題16問の計26問を解いた。公開問題のうち6問が全員共通、4問は実施日により異なる問題で、非公開問題は生徒ごとに異なる問題を出した。

 IRTは異なる問題を解いても学力を比べられ、結果の経年比較ができるのがメリットとされる。文科省は中学理科を皮切りに、26年度は中学英語でCBTを導入し、27年度からは全教科に拡大して紙の問題冊子を廃止する。

 結果公表の方法も変更した。これまでは全国の平均正答率や結果分析、都道府県・政令指定都市別の結果を一括で公表していたが、25年度から3回に分割。次回は31日に結果分析を公表し、都道府県・政令指定都市別の結果は8月以降の予定。


IRTスコアの特徴として、公平性の向上、能力の可視化、テスト間の比較などがあげられているが、より一層個人の能力が浮き彫りにされる。近年は詳細な得点分析を可能とするような技術が開発されているようだが、それによって何が分かるのだろうか。結果を受け取った子どもは自分がどの位置にいるのかだけをきにするだろうし、教員の側はどう教育していけばいいのかに戸惑うだけということにならないか。


7月13日 政府 高齢者シェアハウス整備へ

 政府は、過疎地などで高齢者らが安心して暮らせる住まいを確保するため、低料金で入居できるシェアハウスを全国的に整備する方針だ。年内に詳細を詰め、既存施設を利用して今後3年間で100ヵ所を目指す。介護など地域ケアの提供拠点とも位置付ける。地方では、既存の介護施設の維持が危ぶまれており、住まいを失いかねない高齢者への対応が急務となっている。人口減少に対処する地方創生につながる新たな取り組みとして、自治体側は歓迎している。

 政府が想定するのは、単身高齢者や高齢夫婦らの個室を備えた小規模なシェアハウス。社会福祉法人やNPO法人などが運営する。規模を抑えた介護施設や障害者グループホームを併設し、元気な居住者は施設の業務を手伝えるほか、必要になった段階で介護も受けられる。福祉人材が集約されるため、サービス提供の効率化も見込む。

 建物は既存の介護施設の転用や一部活用で賄う。子どもの居場所など、地域住民が集う場としても期待する。整備事業の主体は自治体で、政府は地方創生の交付金で改修費を財政支援する。制度の詳細を詰めるのは関係省庁横断のチーム。円滑な事業運営に必要な規制緩和も検討する。

 介護業界の人材不足は深刻で、人口減少が進む地域では需要も減って採算が悪化し施設を閉鎖するケースがあり、老後の住まいの確保が課題。全国約120の自治体や広域連合が「地域ケアの再生存続の有力な選択肢」と政府方針に関心を寄せ「地域ケアサービス再生存続自治体協議会」を設立しており、月内に総会を開く。制度内容を提案し、反映を狙う。


【インサイド】福祉人材不足に危機感

 過疎地などで高齢者向けシェアハウスを整備する政府構想に、自治体側の期待が高まっている。福祉に携わる人材の不足に拍車がかかり、既存の介護施設の現状維持は難しいとの危機感を抱いているためだ。構想の成否は、現場の意見を制度に反映できるかどうかが鍵を握る。

 「ケアサービス人材が不足し、介護施設や在宅サービス事業などの維持が困難となる」。鳥取県の平井伸治知事と岐阜県飛騨市の都竹淳也市長、北海道ニセコ町の片山健也町長は6月、石破茂首相と官邸で面会し、窮状を訴えた。

 3人は7月に設立総会を開く「地域ケアサービス再生存続自治体協議会」の代表だ。介護施設が閉鎖すれば、地域のケアサービスが崩壊し、人口流出が加速しかねない。シェアハウス構想は有望な対策とみており、検討の加速を求めた。

 高齢者福祉を巡る環境は厳しさを増している。特別養護老人ホーム(特養)は職員が足りず、受け入れを制限する施設がある。各地で整備が進む「サービス付き高齢者向け住宅」の入居には一定の資力が必要になる。このため地元の施設に入れず、本人の意に反して子どものいる都市部に移り住む例もあると都竹市長。「じくじたる思いだ。住み慣れた地域で終生を過ごしたい住民は多い」と語った。

 政府は高齢者向けシェアハウスを「小規模・地域共生ホーム型CCRC」と命名した。もともとのCCRCは、健康的に生涯を過ごせる地域コミュニティーを指す。日本ではこれまで、地方に整備し、都市部の高齢者を呼び込む地域活性化策の色彩が濃かった。今回の構想はそうではなく「地域の存続自体に問題意識がある」(政府関係者)という。

 自治体協議会が政府に求めるのは財政支援のほか、規制緩和だ。平井知事は、介護施設などの補助金は使途などのルールが厳しく「がんじがらめ」になっているとして改善を求めた。

 政府側は前向きに対処する意向だ。「職員の配置基準などの規制を柔軟化しなければ、箱物を整備しても運営は到底できない」と関係者。自治体側の声を聞きながら検討を急ぐ。自治体協議会の参加数は約120。高齢者の住まい確保という課題に直面する過疎地が中心だ。都竹市長は「過 疎地は未来予想図」と話し、都市部を含む全国に波及するとの見方を示した。 


あまり聞きなれないことばだに「総有」というのがある。五十嵐敬喜『 土地は誰のものか』では、「現代総有」が論じられている。いわれてみれば土地は地球ができて以来増えたり減ったりしていないはず。しかし、囲い込み(エンクロージャー)によって土地の私有が個人の権利として立ち上がった。そのことが資本主義の「発展」に大きく貢献したといわれている。シェアハウスは高齢者に限ったものではなく、「自分の家を持てて上がり」というライフサイクル観へのオルタナティブとして要石的な役割を果たす可能性が高い。


7月13日 【教育】 体験重視 シュタイナー教育人気

 芸術や直接体験を重視するドイツ発祥のシュタイナー教育。認定NPO法人が運営する京田辺シュタイナー学校(京田辺市興戸)が、少子化のなかでも生徒数を増やしている。既成の教科書や点数評価は用いず、子どもの成長段階に合わせた12年(小中高相当)の一貫教育が、他にはない魅力となっているようだ。(岡本早苗)

 「長石は見つかりますか」。6年生の「鉱物学」の授業で、教員がルーペを手にした児童に問いかける。「緑っぽい」「キラッとしてるのは石英かな?」。子どもたちが気付きを口にする。机の上に教科書やノート、鉛筆はなく、あるのは各児童が校庭で拾ってきた花こう岩だけ。花こう岩 を構成する鉱物をじっくり観察した後は、5年生で学んだ古代エジプトの歴史を振り返りながら、有名な口セッタ・ストーンはなぜ重くて硬い閃緑岩が使われたのかを皆で考えた。

 シュタイナー学校には、哲学者でもある創始者ルドルフ・シュタイナーの人間観や教育理念に沿った独自のカリキュラムがある。どの学年も毎朝100分のメインレッスンで主要教科を学ぶ。既存の教科書は使わず、エポックノートと呼ばれるノートに授業で学んだことを絵や文字で書きこんでいき、それが自身の教科書になるという。

 授業には、歌や詩、物語が随所に取り入れられている。ペンタトニックフルートと呼ばれる木製のリコーダーを教員と奏で、歌やリズムで体を動かす。各クラスの黒板には、絵本の一場面のような絵がカラーチョークで描かれ、化学の授業で詩を朗読する姿もあった。教育そのものが総合芸 術という考え方に基づき、知識を覚え込むのではなく、子どもが表現することで感情や意思を育んでいくのだそうだ。

 最高学年は「卒業プロジェクト」と呼ばれる研究に取り組む。好きな旅行をテーマに選んだ12年巽由一さん(17)は、旅行記の編集に取り組んでいる。きっかけは同級生と敢行した自転車旅だった。「1年からずっと同じクラスで、家族のように親密なコミュニティー。自分が好きなことに打ち込めた」と振り返った。

 発達段階に沿って子どもとの関わり方を変えていくことから、入学から8年間は一人の担任が持ち上がる。ある児童の通知表を見せてもらうと、点数評価はなく、同じ教員が贈った詩や所見の中に、その子の成長ぷりや励ましの言葉が書き込まれていた。開校時から高等部の教員を務める内海真理子さん(63)は「初めの頃は『どのくらい学力が付いたのか分からない』と不安を口にする保護者もいた。卒業生が社会で活躍するようになり、理解してもらえるようになった」と話す。

 同校には現在、6〜18歳の約280人が通っており、生徒数は開校以来最多となっている。国内にある全日制のシュタイナー学校7校の中では最も多い。


親と教師でつくる環境

 京田辺シュタイナー学校では、教員が授業に専念できるよう、学校の運営やメンテナンスは保護者が自身の専門性を生かして担う仕組みになっている。開校当初から「親と教師でつくる学校」として学びの環境を維持してきた経緯があり、学校への保護者の積極的な参加も特徴の一つだ。

 同校の始まりは、シュタイナー教育に関心を持った数人の親の勉強会だった。土曜日だけの教室を経て、2000年にNPO法人を設立、翌01年に開校した。校長は置かず、認定NPO法人の代表理事は保護者。木造2階建ての校舎は親と教員たちで整備した部分もあるという。

 併設の学童保育所も保護者が運営する。初等部に子ども2人を通わせる中小企業診断士の八木慶子さん(45)=京田辺市=は以前、学童を運営するクループの代表を務めた。今も毎日の参加者を取りまとめる役を担っている。

 担任教員と保護者全員の懇談会は年5回程度、それ以外でも必要に応じて保護者が話し合いの場を持ち、クラスにトラブルがあれば皆で話し合って解決を目指すという。八木さんは「学校づくりに参加することで親が学ぶことはすごく多い。学校づくりは社会をつくることにも通じるので、学校に参加する親の姿を子どもに見せることも大切だと思っている」と話した。


シュタイナー学校の評価については賛否両論があるが、一つの教育の在り方を示すものとしての存在は大きい。ほかにもモンテッソーリ教育フォルケホイスコーレなども同じく評価できるものだろう。
 京田辺シュタイナー学校での保護者の役割は注目すべきだろう。現在多くの学校のPTAが存続の危機に面していて、その改革が模索されている。これまで公立学校では縦割りの強制という形で運営されてきたきたものが時代にそぐわなくなってきているからだろう。PTAを一つのコミュニティとして考えると、参加の自由や運営の自主性、財源の確保などの面からのアプローチの必要性を教えてくれているように思える。


7月12日 全国アンケート 被爆者7割 核再使用懸念

 広島、長崎への原爆投下から今年で80年となるのに合わせ、全国の被爆者に核を巡る現状や自身の体験について尋ねた共同通信のアンケートで「再び核兵器が使用される可能性が高まっている」と考える人が7割近くに上ったことが11日、分かった。ロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮の核開発を理由に挙げる声が多かった。身をもって核の恐ろしさを訴えてきた被爆者の願いとは裏腹に、不安定な国際情勢から「核の危機」が依然身近にあるとの認識が浮き彫りになった。

 アンケートは日本原水爆被害者団体協議会(被団協)に参加する組織などの協力を得て、2月以降に約6600人に配布。胎内被爆した79歳から104歳まで1532人から有効な回答を得た。

 68・6%が、再び核兵器が使用される可能性が高まっていると思うとし、「そう思わない」が6・7%、「分からない」が24・7%。理由では「ロシアのプーチン大統領が核使用を示唆した」(86歳女性)や「偏狭なナショナリズムが広がっている」(82歳女性)、「核使用が安易に語られている」(88歳男性)などの記述があった。

 原爆を投下した米国への感情を尋ねた質問への回答は「許せない」が45・7%と最多で「特別な感情はない」が24・3%、「分からない」が16・9%だった。

 一方、日本が日米安全保障条約に基づき米国の「核の傘」の下にいることについての質問には19・6%が「(核の傘から)脱却すべきではない」と答えた。理由は「北朝鮮、中国、ロシアの脅威がある」(82歳男性)、「自国で守るすべがない」(80歳女性)などを挙げた。43・9%が「脱却すべきだが、現時点では時期尚早」とし「今すぐ脱却すべきだ」は24・8%だった。

 日本政府の核廃絶への取り組みは、核兵器禁止条約への不参加などから、評価しないとの意見が7割近くに上った。

 被爆体験を証言した経験は7割超が「ない」と回答。被爆時の記憶も「ない」が45・5%と半数に迫った。


同志社大・三牧聖子教授今こそ核廃絶求める姿勢を

 アンケートで被爆者の約7割が懸念を示すように、世界では多極化が進み、核の使用が現実味を持って語られている。トランプ米政権も広島と長崎への原爆投下になぞらえてイラン核施設への攻撃を正当化し、核なき世界に背を向けていることは明らかだ。そんな米国の「核の傘」に依存した安全は機能するのか。日本は戦後80年にわたって思考停止を続けてきた側面がある。平和国家の役目として、今こそ全ての国に核廃絶を求めてい<姿勢を明確にすべきではないか。 


立命大・君島東彦特命教授市民が平和構築の担い手に

 アンケートで、80年たった今も被爆者の4割以上が原爆を投下した米国を「許せない」と感じているのは注目すぺき点だ。日米関係を重視するのか被爆者の感情に向き合うのか、日本政府の姿勢が問われる。日本が核廃絶を進めるには国内政治の安定とアジア各国との協調の両方が重要。被爆者を含む戦争被害者が連帯して非戦を訴え続けること、被害者だけでなく、市民一人一人が次世代の平和構築の担い手となることが求められる。 


政府の“受忍論”4割が反発

 被爆者アンケートでは、戦争被害は国民が等しく我慢すべきだとする「受忍論」への反発が浮き彫りになった。日本政府が国家補償を拒否する根拠としているが、約4割が「納得できない」と回答。「国が起こした戦争で国民に我慢を求めるのは筋違い」と強く批判した。

 受忍論は1968年、戦時中に海外から日本に引き揚げた人が、残してきた財産の補償を求めた裁判の判決で最高裁が打ち出した。80年には原爆被害者対策の在り方を検討する厚生相(当時)の私的諮問機関も展開した。被団協は、核兵器廃絶と並び国家補償を基本要求に掲げ、昨年のノーベル平和賞授賞式のスピーチでは、代表委員の田中煕巳さんが日本政府が原爆の死者への国家補償を行っていない現状を指弾した。

 アンケートの回答で受忍論を「納得できない」とした理由について、国が起こした戦争であると指摘する意見の他、「戦争の後始末を国家がするのが当然となれば、戦争を始めにくくなる」(86歳男性)と、国に再び戦争をさせないためにも国家補償を求めるべきだとの指摘もあった。


アンケートの回答からは、本来なら受ける必要がなかった被害であるにもかかわらず、国策としての戦争に巻きまれた被爆者の人たちの逡巡が見える。戦後80年の夏は、改めて非戦・不戦を誓う年でなければ。


7月11日 警察庁 中高生間の盗撮550人摘発

 中高生が同級生らを盗撮したとして摘発された人数が、2023年7月に性的姿態撮影処罰法が施行されてから今年5月まで計550人だったことがい11日、警察庁への取材で分かった。うち約4割は校内で発生。中高生にとってスマートフォンやタブレット端末が身近になっており、専門家は「再犯防止のため、カウンセリングなどの早期治療が重要」と訴えた。

 盗撮を巡っては生徒だけではなく、教員らが女子児童を盗撮し、画像や動画を交流サイト(SNS)のグループチャットに投稿、共有する事件も起きている。

 「娘さんが盗撮されました」。24年7月、中学校からの連絡に福岡県の女性は言葉を失った。詳しく状況を聞くと男子生徒が教室にスマホを隠し、体育の着替えを盗撮していたことが分かった。

 教師がロッカー内に置かれていたスマホを見つけ、男子生徒が自分のものと認めたことで発覚。教師が動画を確認したところ、娘を含めた複数の女子生徒が着替えをする姿が写っていた。

 女性によると、別の学年では学校で配布されたタブレットを使った盗撮もあったという。女性は学校側の対応に不信感を持ち、地元の警察署へ被害届を提出した。

 警察庁によると、550人のうち校内で盗撮したのは219人だった。年別で見ると23年7〜12月43人(うち校内10人)、24年366人(同151人)、25年1〜5月は暫定値で141人(同58人)。また「中学生同士」81人、「高校生同士」423人だった。

 埼玉県警は24年、修学旅行先で入浴していた同級生を盗撮したとして、当時公立中の男子生徒を書類送検。東京都内の私立中高一貫校で数十人を盗撮したとして同年に摘発された男子生徒らは、画像をSNSで共有していた。

 性障害専門医療センター代表で医師の福井裕輝さんは「センター立ち上げ当時(11年)と比べて、盗撮再犯防止のための治療に訪れる未成年は約20倍に増えた」と指摘。画像や動画をSNSで友達と共有していた事例も多いとし「インターネットに出回ると完全に削除することは難しい。中には『悪ふざけだった』と話す子もいるが、犯罪だということを自覚してほしい」と強調した。


ICTのリテラシーを高める教育が当初は声高に叫ばれたが今ではその声は小さい。先端技術をどう使うかというリテラシーよりも、「実用」が先行するのはいつの時代でも同じ。改めて「技術」とはなにか、人間に何をもたらすのかを問わねばならない時代なのだろう。イリイチの『コンヴィヴィアリティーのための道具』(ちくま学芸文庫)は必読かも。ちなみに訳者が渡辺京二といのも興味深い。


7月11日 文科省 教員の性暴力「根絶を」

 教員による児童生徒へのわいせつ事案などが全国で相次いで発覚したことを受け、文部科学省は10日、都道府県・政令指定都市教育委員会の教育長らを集めた緊急会議をオンラインで開いた。文科省の望月禎・初等中等教育局長は「教育界を揺るがすような大変ゆゆしき事態。教員による性暴力は根絶しないといけない」と述べ、服務規律の徹底を改めて求めた。

 望月局長は、教員は「児童生徒の模範となり、一生も左右するような存在」と強調。「教育行政に携わる私たちにとって、今は危機的な状況であるということを共有してほしい」と述べた。

 具体的な再発防止策として、教員への研修実施や教室などの定期的な点検を要請し、児童生徒の活動を撮影する際は学校所有のカメラやタブレットを使い、管理職を含む複数名で常に確認できるようにしておくといったことを求めた。

 教員によるわいせつ事案は6月から相次ぎ発覚。女子児童の盗撮画像を交流サイト(SNS)のクループチャットで共有したとして、名古屋市立小の教諭らが逮捕された他、埼玉、広島、福岡の各県でも児童にわいせつな行為をしようとしたり、生徒の着替えを盗撮したりしたなどとして逮捕された。


教員の子どもへの性暴力は断じて許すことはできない。しかし、文科省が言うような対処で「根絶」できるのだろうか。教員間の相互監視と締め付けが厳しくなるだけで効果があるようには思えない。


7月11日 参政党代表発言 「沖縄戦、細かく調べていない」

 参政党の神谷宗幣代表は10日、太平洋戦争末期の沖縄戦を巡り、日本軍による住民殺害は例外的な事例だったとの持論を重ねて強調した。那覇市で記者団に「日本軍は沖縄県民を守りに来た。それが原則だ。中には島民に迷惑をかけ、殺害してしまう人もいた。日本軍イコール悪みたいになるのは良くない」と述べた。

 沖縄戦では、日本兵は住民を集団自決に追い込んだり、スパイ容疑をかけて虐殺したりした。住民にスパイがいたと考えるかと問われ「細かいところまで調べていない。いつの時代もそういうものの中に紛れ込んでいる」と語った。

 これに先立つ街頭演説では、日本軍について「この人たちが戦ってくれたから本土復帰もできたとか、九州に侵攻されずに済んだとか、いろいろなことが考えられる」と言及した。


西田昌司氏の「ひめゆりの塔」発言と全く同じ発言。参政党の「日本人ファースト」には沖縄は含まれていないのだろう。それにしても、歴史への深いまなざしを持たない人たちが政治家を目指すことへの不安は大きい。ちなみに、神谷代表は核武装についての言及もあるという。


7月11日 愛媛大研究チーム ツシマヤマネコからPFAS

 国の天然記念物で絶滅危惧種のツシマヤマネコから、発がん性などが指摘されている有機フツ素化合物(PFAS)が検出されたことが10日、愛媛大などの研究チームによる調査で分かった。有害なポリ塩化ビフェニール(PCB)も確認、チームはいずれも高濃度としており、健康影響が懸念されるという。

 ツシマヤマネコは長崎県の離島・対馬に生息。愛媛大先端研究院の野見山桂准教授は、PFAS汚染は各地に広まっており、他の野生動物にも影響を与えている恐れがあると指摘。「ツシマヤマネコのみならず、野生動物の保護のために全国的な調査と汚染源の特定が必要だ」と話した。

 チームは、2022〜25年に交通事故などで死んだツシマヤマネコ21匹を、環境省の許可を受けて調査。代表物質とされるPFOAとPFOSを含む37種類のPFASについて、肝臓と腎臓の濃度を分析した。

 その結果、全ての個体からPFASを検出。肝臓は中央値で1グラム当たり約110ナノグラム(ナノは10億分の1)、最大で約360 ナノグラムに達した。腎臓は中央値約60ナノグラム、最大約210ナノグラムだった。性別や年齢、地域による大きな差はなかった。

 肝臓の濃度はほぼ全ての個体で、肝細胞の試験で毒性が出か値た上回っており、肝機能へのリスクが考えられる数値だという。腎臓も高濃度といえるとしている。

 高濃度の個体では、有害物質がたまりやすいとされるシャチに匹敵。ドイツのヨーロッパヤマネコとの比較では中央値で約8倍となり、国際的にみても高い数値だった。原因について、海洋ごみや不法投棄ごみが汚染の一因である可能性があると指摘。餌を通じ、食物連鎖で濃度がより高くなったと考えられる。

またチームは、PCBなどの残留性有機汚染物質(POPS)も調査。ツシマヤマネコ19匹を調べたところ、一部の個体からは極めて高い汚染が確認された。野見山准教授は「生息数の減少と関連している恐れが高い」として八る。


原田浩二府立大教授全国動物調査実施を

 ツシマヤマネコは希少動物ということもあり、今回の分析はとても重要なデータだ。検出された有機フツ素化化合物(PFAS)の濃度 は高いといえ、汚染がすでに至るところへ広がっていることを示している。濃度が高くなれば動物も健康被害が出ることが考えられる。鳥類ではPFASが繁殖能力に影響することが知られており、ほかの野生動物でも繁殖に影響を及ぼす可能性がある。全国でモニタリング調査を 実施し、汚染の実態を調べていくことが必要だ。


国は早急に実態を調査すべきだ。「人新生」と呼ばれる今の時代は「公害」は目に見えない形で進行しているといえるだろう。確証はないけれども野鳥の数が近年減少しているのではとの印象を持っている。


7月10日 参院選 公教育理念 議論乏しく

 高校授業料の無償化拡充により私立の上乗せ分の所得制限が撤廃されることで、私立人気が高まりそうだ。先行した東京都や大阪府では公立離れが起き、危機感を抱く自治体は多い。自民、公明、日本維新の会の3党の議論は、拡充対象をどこまで広げるのかといったことに終始し、公教育の未来像や理念に関するものは乏しかった。

 6月中旬、東京都内で開催された私立中高の合同学校説明会に多くの人が集まった。「個別指導に力を入れている」「部活動で実績がある」。各校の担当者が自分たちの魅力をアピールし、親子が熱心に聞き入った。

 「公立に比べて海外留学のプログラムが充実している」と話すのは、娘と一緒に訪れた女性(45)。別の母親は「上の子が私立だったので、下の子は金銭面から都立しかないと思っていた」というが、無償化拡充で「私立も選択肢に入った」と歓迎する。

 こうした声を反映するように、2024年度から私立の所得制限をなくした東京都では公立離れが進み、今春入学者の都立高入試では全 日制の倍率が前年より下がった。

 私立間の競争も激化しそうだ。これまでは同じ都内の私立高に通っていても隣県在住の生徒に都の制度は適用されなかった。26年度からは国の制度として無償化が拡充されるため、私学関係者は「施設や進学実績が良い都内の私立に、埼玉県などからも受験生が集まる可能性がある」とみる。

 進学率が100%近い高校は「準義務教育」とも呼ばれるが、公立だけで全ての生徒を受け入れるわけではない。私立が受け皿となって進学率上昇を支えてきた面がある。その一方で授業料の公私間格差は大きく、私立への国費投入には「一定の正当性がある」(文部科学省幹部)。

 ただ、高所得世帯では無償化で浮いた授業料分が塾代などに回り、かえって教育格差が広がるとの指摘がある他、公立離れが進めば統廃合で高校がなくなる地域が続出する恐れもある。

 名古屋大の中嶋哲彦名誉教授(教育行政学)は「教育の機会均等が進む点は望ましい」としつつも、「公立高の維持といった政策とセットで進めなければ、かえって学びの選択肢を狭めることになりかねない。今後の公教育制度をどうするかという理念を、明確に国民に示す必要がある」と話した。


かつて新自由主義的な流れの中で、教育バウチャー制度が議論されたことがあった。そのときにも学校間格差を引き起こすとの議論があった。今回の無償化もほぼそれと同じなのだが、「金額」だけが議論になった。おそらく、この間に「教育は金で買うもの」との認識が一層拡大したののと考えられる。公教育をどう考えるかがまず議論されなくてはならないはずにもかかわらずだ。維新の果たした役割は大きくマイナス効果をもたらしている。


7月10日 内閣府 非公開で学術会議設立委

 日本学術会議を2026年10月に現行の「国の特別機関」から特殊法人に移行させる新法成立を受け、内閣府が新法人発足の準備をする「設立委員会合」を、事前に日程を明らかにせず非公開で開催していたことが9日、分かった。政府は法人化により学術会議の活動の透明性を高めるとしているが、新法人の設立プロセスの情報開示に後ろ向きな姿勢が批判を呼びそうだ。

 内閣府担当者は「率直な意見交換を行う目的。非公開にすることは初会合で了承された」と説明している。新法は、会員選考や運営面で首相任命の有識者らが関わる仕組みを構築するとしており、法人化後の政府介入を懸念する声が上がっている。

 新法では発足前の特例として、学術会議会長は首相任命の有識者2人と協議して会員候補者選考委員会を設置すると規定。6月26日の会合後、内閣府のホームページに掲載された議事録などによると、有識者に政府の総合科学技術・イノベーション会議議員の宮園浩平・東大特別栄誉教授と、日本学士院長の佐々木毅・東大名誉教授を選んだことが報告された。

 選考委員会は、大学や経済団体が25年末から26年春に行う推薦などを基に会員候補者を選ぶ。設立委員は同9月ごろに会員予定者を指名する。

 設立委員は、学術会議の在り方に関する有識者懇談会座長を務めた岸輝雄・東大名誉教授ら計9人。学術会議の光石衛会長や副会長3人も含まれる。

 学術会議の組織見直し議論は、20年に菅義偉首相(当時)が学術会議から推薦された新会員候補者6人の任命を拒否したことをきっかけに浮上。政府は拒否の理由を明らかにしないまま組織改革を進めた。新法では運営の透明性を高めるとして、首相任命の監事や評価委員の新設を規定したが、学術会議は監事らを通じて政府の介入を受ける恐れがあるとしている。


駒込武・京大教授説明責任軽んじる

 学術会議の組織改編に向けた会議を非公開で開催し、結果だけを公表する内閣府の姿勢は、説明責任を軽んじるものだ。政府は法人化で透明性を高めると主張しているが、設立委員や会員選考に関与する首相任命の有識者の選定理由について詳細は明かされておらず、むしろ不透明になっている。学術会議は法人化により、行政の思うような組織につくり替えられることになると懸念している。会合を非公開としたことは、政府が社会の反発を買うことを恐れる姿勢の表れだ。


「設立委員会」が非公開というのは透明性を完全に無視している。委員会がまず行わなければならないのは「菅元首相がなぜ6名の任命を行わなかったのか」ではないだろうか。


7月9日 4か国高校生調査 理科 実用性認識「低い」

 日米中韓4力国の高校生を対象とした科学に関する意識調査で、「社会に出たら理科は必要なくなる」と思う高校生の割合は日本が5割弱で最も高く、理科の実用性や必要性に対する認識が低い傾向があったことが分かった。

 調査は国立青少年教育振興機構などが実施。科学に関する興味・関心や学習活動などについて尋ね、日本では昨年9月〜今年1月に約4900人が回答した。

 調査結果によると、「社会に出たら理科は必要なくなる」との問いに「とてもそう思う」「まあそう思う」と答えたのは日本が45・9%。韓国が33・5%、米国27・6%、中国17・6%だった。

 「理科の学習は面白い」とする高校生の割合は日本が比較的高かった一方、「学校で学習する内容より多くの科学の知識を勉強したい」としたのは42・1%と最も低かった。最も高かったのは中国で56・8%だった。

 また、デジタル技術の活用では、プログラミングをどのぐらいするかで「よくする」「時々する」としたのは日本が最も低い14・0%。最も高い韓国で38・9%だった。学校でプログラミングを学んだとする高校生は日本が最も高かった。

 同機構青少年教育研究センタ客員研究員の青山鉄兵・文教大准教授は「日本の高校生には学校外で科学に触れる機会や、主体的に科学活動に取り組む機会が不足していると考えられる。学校外の教育機関や企業などと連携し、多様で質の高い学びを拡充していくことが求められる」と指摘している。


通産省や文科省が期待しているような結果ではなかったようだ。ただ、「不足」「求められる」とのコメントは現場の負担を大きくするだけになるのではとの危惧を抱く。


7月9日 【インサイド】 差別助長・排外主義に懸念

 石破茂首相が、外国人政策に関する新組織の設置を決めた。受け入れ制度の厳格化や犯罪への断固とした姿勢を示すことで、自民党支持の保守層をつなぎ留めたいとの狙いがにじむ。背景には「日本人ファースト」を掲げ、勢力を伸ばしている参政党への警戒感もありそうだ。急速な人口減が進む日本で、国家の持続的成長の鍵を握る「外国人材活用」。ただ過度な規制強化は差別助長や排外主義につながりかねず、有識者からは慎重な議論を望む声が上がる。

 「司令塔を中心に、外国人との秩序ある共生社会の実現に向けたさまざまな施策を総合的に推進する」。首相は8日、官邸で居並ぶ閣僚に対し、内閣官房に事務局組織を創設し、政府一丸となって対応すると宣言した。

 新組織は、自民が参院選公約で打ち出した政策の一つ。公約では「違法外国人ゼロ」に向けた取り組みを加速し、外国の運転免許証を日本の免許証に切り替える制度や不動産所有の対応を厳格化すると明記した。新組織では、こうした諸問題への対応策をまず話し合うことになりそうだ。

 外国人政策を巡っては、日本維新の会が外国人比率の上昇抑制などの人口戦略策定を主張。国民民主党も外国人土地取得規制法やスパイ防止法を制定するとした。

 与野党が張り合うように打ち出しを強める裏には、参政への危機感がある。参政は、行き過ぎた外国人受け入れに反対し「日本は日本人で支える国に」と訴える。東京都議選で3議席を獲得し、報道各社の参院選序盤情勢調査でも勢いがみられる。

 ある閣僚は、参政が全45選挙区に候補を擁立している点に触れ「間違いなく自民にとって脅威だ」とうめいた。

 一方、立憲民主党は外国人との「共生」を重視する。公約で「多文化共生社会基本法」制定を約束した。野田佳彦代表は「日本に住み学びたい、働きたいという人が増えるのは良いことだ。そういう国をつくりたい」と札幌市で記者団に語った。

 共産党も外国人労働者に日本人と同等の労働者としての権利を保障するとした。れいわ新選組は外国人労働力を低賃金で受け入れてきた「移民政策」に反対する。

 移民政策に詳しい明治学院大の加藤丈太郎准教授は、参政の主張が受け入れられている要因を「インターネットを通じて自分に近い言説に繰り返し触れる中で、実際には外国人と接していないにもかかわらず、外国人を敵視する人が増えている」と分析する。

 一方、政府の動きを「参政の伸長を受け、政府も『しっかり対応している』と示さなければいけないと拙速に動いているのではないか」とみる。

 排外主義に陥らないよう回避する動きも実際に出ている。国民民主の玉木雄一郎代表は公示日の3日、公約の一部修正を発表した。「外国人に対する過度な優遇を見直す」とした文言を「外国人に対して適用される諸制度の運用の適正化を行う」に改めた。玉木氏は「排外主義的」との指摘を受けた措置だと説明した。

 加藤氏は「外国人をたたいても課題は解決しない。日本として外国人とどう向き合うのかを考えるきっかけにすべきだ」と冷静な議論を求めた。


タレント ネルソン・バビンコイさん平和主義イメージ危うく

 政府の新組織設置表明は、排外主義的な主張を掲げる参政党などに保守層の支持が流れるのを止めるための政治的戦略ではないか。米国では移民摘発が不法滞在者以外にも及び、恐怖が広がっている。同様のことが日本で起こってほしくない。来日20年近くになるが、日本でも外国人を攻撃する言動が広がっている。行き過ぎた愛国心は、平和主義の国というイメージを危うくしないだろうか。少子高齢化に直面する先進国では、移民なしに人口を保つことはできない。コミュニケーションを取りながら文化的な違いを受け入れていくほうが未来は明るいはずだ。   


千葉大 手塚和彰名誉教授 外国人共生の支援組織に

 政府が設置する新組織は各省庁からの寄せ集めでなく、外国人材受け入れの法整備や欧州諸国が直面する移民問題に知見のある人材を活用すべきだ。外国人との共生に向けた支援を推進する必要がある。

 共生社会を掲げるのは簡単だが、外国人には日本語や文化の習得が必要で、公的機関による教育が求められる。外国人を受け入れないことを前提 とした従来の関連法は改正する必要があるものの、対応が追い付いていない。受け入れに慎重な政党が出てくる中、外国人政策をポジティブな取り組みに転換していく姿勢が咀要だ。   


参院選 外国人へ差別差別投稿 根拠曖昧

 外国人との共生の在り方が参院選の一大争点に浮上している。一部の政党が排外主義的な主張を掲げ、政府は在留外国人に対応する事務局組織を設置する方針を表明。呼応するように交流サイト(SNS)では「外国人の犯罪が増えている」「医療費不払いが横行」といった差別的な投稿が広がる。しかし根拠が曖昧なものも多く「危ういポピュリスムに陥っている」と懸念の声が上がる。

 「日本人ファースト」を掲げる参政党の神谷宗幣代表は3日、東京・銀座での街頭演説で「いい仕事に就けなかった外国人が集団で万引などをして大きな犯罪が生まれている」と発言。政治団体「NHK党」の立花孝志党首は4日「黒人やイスラム系の人たちが集団でいると怖い」と語った。

 排外主義的とも言える主張への批判はあまり広がらず、SNSを中心にむしろ賛同の意見も多く見られる。しかし、外国人は本当に迷惑な存在なのか―。警察庁などによると、日本に住む外国人の摘発件数は2023年に微増したものの、22年までは減少傾向にあった。日本人も含めた摘発人数に占める割合は10年ほど前から2%前後で推移し、大きな変化はない。

 厚生労働省が全国約5500の医療機関から回答を得た調査によると、昨年9月の訪日外国人患者数は速報値で1万1372人。このうち医療費を払わなかったのはO・8%の87人にとどまる。

 厚労省によると、国内在住の外国人による国民健康保険(国保)の納付率は、データのある150市区町村の平均で63%(昨年12月末時点)。日本人を含めた全体は93%で、確かに外国人の納付率は低いと言えるが、母国に同様の仕組みがなく、制度を理解できない外国人が多いことも背景に あるとみられる。このため厚労省や出入国在留管理庁は制度の周知に取り組んでいる。

 一方、23年度の国保の被保険者は2378万人で、うち外国人は4%の97万人。23年3月〜24年2月の診療分で国保総医療費は8兆9268億円に上ったが、外国人に払われたのは1%に当たる1240億円だった。

 法政大大学院の白鳥浩教授(現代政治分析)は、空前の物価高で有権者が「やり場のない怒りを外国人にぶつけている」と分析。円安などの本質的な問題に向き合わず「外国人が日本を貧しくしたという議論はあまりに乱暴。差別につながる恐れがある」と強調した。  


【選挙コラム】 拝外主義

 認知症の高齢男性に、フィリピン出身の女性職員(35)が優しく語りかける。女性は東近江市の特別養護老人ホームで働き始めて2年。母国に残した子どもの学費を稼ぐため懸命に働く。意欲的な姿に、施設長も「日本人職員は見習つてほしい」と苦笑するほどだ。

 介護現場に限らず、人手不足の日本の労働市場にとって外国人の存在感が年々増している。京都市内でもコンビニ店員、建設作業員ら働く外国人の姿を見かけない日はない。

 だが、外国人に対する視線は時に冷たい。SNS(交流サイト)では「外国人に税金を使うな」「過度な優遇は見直すべき」など不満の言葉があふれる。こうした声に押されてか、参院選でも各党が「外国人」関連の公約を掲げ、共生の在り方が争点として急浮上している。

 不満の背景にあるのは長引く不況だろう。賃金上昇は物価高のペースに追いつかず、「失われた30年」に終止符を打てたとは思えない。思えば、1988年生まれの私にとって、消費税は物心ついた頃にはすでにあり、モノの値段は安いのがいいのが当たり前。就職活動の頃は、リーマン・ショツクで企業は採用活動を縮小。エントリーシートは50社近く送ったが、面接に進めたのは数社たった。

 努力が報われないと感じられてしまう社会では、しばしば不満や怒りの矛先が自分より立場の弱い人や、外国人へと向かう。だが、排外主義が過ちを生むのは、ナチス・ドイツや関東大震災後の朝鮮人虐殺の例を引き合いに出すまでもなく歴史が証明している。

 京都市内では、外国人観光客の急増に伴うバスの混雑やマナー違反にうんざりしている市民は多い。気をつけたいのは、オーバーツーリズムに対する正当な問題提起が、言葉の選び方一つで、差別や誹諧中傷へといとも簡単に装いが変わることだ。支持を広げたいがあまり、人々の弱さを利用し、 分断を煽ろうとするよこしまな立候補者はいないと信じたい。(田代真也) 


欧州でのポピュリズム政党の躍進、アメリカの自国中心主義のMAGA、イスラエルの独善、ロシアの拡張主義など、21世紀は戦争と排外主義の時代となってしまった。これまでの成長至上主義(GDP増大指向)のグローバルノースが延命のためにグローバルサウスを「収奪」している構造がまさに排外主義を生み出している。これまでも日本では在日韓国・朝鮮人へのヘイトスピーチやクルド人へのヘイトクライムなどがあった。しかし、それは一部の排外主義者の行動とみなされていたが。欧州のポピュリズム的政党と同じような参政党によるポピュリズム政党の本格的誕生となるとすれば大きな危惧を抱く。参政党の出自はもともと自民党の右派なのだが、国家観だけでなく健康への関心(有機農法や反ワクチン)も強い。かつて左派の領域もカバーする柔軟性をもっているところが新しく共感を得ているように見える。一言でいえば天皇制と有機農業の結合だろう。5・15事件での橘孝三郎の行動動機との近似性もみうけられる。


7月6日 京滋小学校 午前中5時間授業 広がり

 京都府や滋賀県の公立小学校で、午前中に「5時間授業」を行う取り組みが広がっている。1時限当たり45分の授業時間を5分短縮して40分にすることで、一般的な「4時間授業」に1時限を上乗せしている。1時限当たりの授業時間を削ってできた時間は、午後にまとめて子どもの個別学習などに充てている。多くの実施校では時間割の全体的な見直しで下校時間が30分程度早まっており、教員の働き方改善にもつながっているようだ。

 2025年度に午前中5時間授業を実施しているのは、京都府内は京都市の2校。滋賀県は守山市2校、栗東市1校、東近江市1校、米原市1校、愛荘町2校。現時点で実施していないものの、「検討している」とした自治体も複数あった。

 実施校では、登校時刻や休憩時間の長さは極力変えず、給食時間は数十分遅くなるケースもある。下校時刻は朝学習などの見直しで、20〜30分程度繰り上げている。教員は児童の情報共有や授業研究などに充てる時間に余裕が生まれるため、残業が減っているという。

 草津市は来年度から市立小全14校で導入する方針。毎日午後に20分間の「学びタイム」を新設して、年間を通じた全体の学習時間は変わらないようにする。学びタイムでは児童個別の課題に応じて、基礎基本の定着や発展的な学習に取り組むほか、6時間目の授業と組み合わせて60分授業も想定している。

 同市教育委員会学校教育課は「午前中の5時間授業は詰め込み過ぎとの指摘もあるが、子どもは適応が早い。落ち着いて学習に入れるようにと設けている朝学習の時間をなくすが、どんな影響があるか今秋全校で実施する試行を通じて確かめたい」としている。

 授業の時間短縮や内容の柔軟化を巡っては、中教審が学校現場の裁量を拡大して多様な子どもに対応できるようにするため、学習指導要領の改定を議論している。1時限当たりの授業時間を短くして生まれた時間を、個別学習や探究的な学びに充てることも想定している。


午前中に5時間授業が目新しいもののように見えるがなにやらデジャヴ感がある。45分授業を5分間短縮してというところである。これまでもこうした工夫が流行ったことがあった。これで学びの質の向上や教員の働き方改革になるとは思えない。「積みすぎた箱舟」である教育内容をどの程度削減するかということが本丸ではないか。おそらく研究指定校でない一般校では「時間つぶし」のために何かする程度の取組になるような気がする。


7月5日 中教審 学習態度 評価対象外に

 次期学習指導要領に向けた改定作業を行う中教審特別部会が4日開かれ、文部科学省は児童生徒の成績の付け方を見直す方針を示した。学習評価の観点の一つとしている「主体的に学習に取り組む態度」を直接的に反映させない方向で検討する。学習態度は適切な評価が難しく、教員の負担が重いとの指摘が出ていた。

 現在は教科ごとに@知識・技能A思考・判断・表現B主体的に学習に取り組む態度−の三つの観点を「A・B・C」でそれぞれ評価し、それを総括して「評定」を付ける。評定は小学校は3段階、中学校は5段階。家庭には通知表の形で評定を踏まえた成績が示されることが多い。

 学習態度は、学びに能動的に関わったかどうかや粘り強さなどが評価の軸として示されているが、宿題やノートの提出頻度といった形式で判断するケースが少なくないとされる。

 見直し案では、観点別評価を「知識・技能」と「思考・判断・表現」の二つに再編。学習態度は「思考・判断・表現」を評価する際の要素に組み込み、特に良かった場合は加点する形とする他、総合所見欄などに記す。加点した場合に評定でどう考慮するかは今後議論する。

 特別部会では委員から「知識中心の在り方に戻ると短絡的に受け取られないようにしないといけない」との指摘があった。

 また、文科省は通知表の在り方にも言及。通知表に関する取り決めはないが、文科省によると、3学期制の小学校で学期末ごとに作成しているのが約6割を占める。教員負担を減らすといった面から、学年末だけにすることが可能と明確に示すとした。


【インサイド】主体性の判断に課題

 児童生徒評価の観点の一つである「主体的に学習に取り組む態度」は、現行学習指導要領に改定する際、「関心・意欲・態度」を衣替えする形で組み込まれた。授業中の挙手の回数といった表面的な評価が行われているとの指摘を受けての変更だったが、同様の課題は今も根強く残る。

 大手予備校河合塾が2023年に高校教員らを対象に行った調査によると、約9割が観点別評価に課題を感じると回答。自由記述では「主体性の評価が難しく教員間で格差が生じやすい」「提出物が出ていればA評価とするなど導入目的を果たしていない」といった意見が寄せられた。

 「主体的に学習に取り組む態度」の評価は、不登校の児童生徒が不利になりやすいが、自宅やフリースクールなどで学習を続ける子どもは少なくない。

 観点別評価から外す今回の文部科学省の方針について、4日の中教審特別部会では委員が「学校が嫌になってしまった子どもにとっても励みになる」と肯定的に評価した。ただ、学習態度を評定にどう反映させるかについては意見が分かれた。

 評定は内申点に直結し、高校入試などに影響を与えるため、文科省は秋以降に専門の作業部会を立ち上げ、慎重に議論を進めるとしている。


1990年代後半から2000年代にかけて実施されたゆとり教育の中で「関心・意欲・態度」が重視されるようになった。当時から評価基準が恣意的なるなどの批判があったが、学びの方向転換への期待とも相まって渋々受けいらられてきた。ゆとり教育批判が噴出し、2016年の文科相が「ゆとり教育との決別」を宣言したことから一気に学力重視へと進みだした。しかし、学習態度の評価はそのまま据え置かれて整合性が取れなくなった。中教審が今更「知識中心の在り方に戻る」のではとの危惧を表明するのは噴飯ものといわねばならない。


7月3日 ガザ 発砲報道が波紋

【エルサレム共同】パレスチナ自治区ガザでの米国とイスラエルが主導する物資配給について、イスラエル紙が兵士の証言を基に、住民へ「軍が意図的に発砲している」と報道し波紋を広げている。5月下旬から始まった配給を巡っては、拠点周辺でガザ住民の殺害が相次ぎ、保健当局は2日、死者は640人と発表。支援団体は「支援を装った虐殺だ」と非難する。

 物資配給は従来、国連中心に約400ヵ所で実施されてきたが、イスラエルは「イスラム組織ハマスが物資を奪う」と主張し、枠組みを変更した。米国と共に設立した「ガザ人道財団」が中部と南部の計4ヵ所で行う。

 6月27日のハーレツによると、配給は通常、毎朝1時間のみ。拠点周辺の任務に就いた兵士らは配給時間前に到着した住民らに発砲したと証言した。明ら かに脅威がない場合も司令官は発砲を命じたとしている。

 ある兵士は「殺りくの場だ。催涙ガスなど群衆を制御する手段は取られず、重機関銃や迫撃砲を用いた」と強調した。別の兵士は「ガザでは命が失われて も何の意味もなさない」と語った。

 イスラエル軍は当初、八ーレツの報道を否定したが、地元メディア「タイムズ・オブ・イスラエル」は、軍が拠点周辺で民間人を殺害したことがあると認めたと伝えた。

 ガザ市の劇作家アリ・アブヤシンさん(60)は電話取材に、長男(36)が拠点付近で銃撃が始まり引き返したと説明した。「住民は最低限の食料を得るのも命がけだ。なぜ世界は黙っているのか」と怒りをにじませた。


イスラエルのイラン攻撃で世界の目はガザから離れてしまった、と住民らは感じているのだろう。イスラエルの戦闘はなんらの政治的な意味もなく、最悪のパレスチナ住民へのジェノサイドであり続けている。


7月3日 アメリカ 対外援助機関を廃止

【ワシントン共同】ルビオ米国務長官は1日、対外援助を担う国際開発局(USAID)を公式に廃止すると発表した。世界各地での事業を同日付で停止した。米国は世界最大の対外援助実施国。その主軸を1961年から担ってきた機関が約64年の歴史に幕を下ろした。途上国で死者が増え、今後5年間で約1400万人の命を脅かすとの分析もある。

 廃止は、政府歳出の削減を公約しているトランプ大統領の政策を象徴する動き。今年1月の政権発足直後から、実業家マスク氏が率いた「政府効率化省」の主導で予算停止や職員削減を進めていた。米国第一の外交方針と合致する事業に限り、国務省に移管する。

 ルビオ氏は声明で、今後の対外援助は「対象を絞り、期間も限ったものになる」と説明した。USAIDの下で「開発目標はほとんど達成されず、地域の不安定化は進み、反米感情が増大した」と訴え、USAIDが「国連や国際非政府組織(NGO)の方ばかりを向き、米国の納税者を顧みなかった」と主張した。

 英医学誌ランセットは、USAIDの大幅な資金削減によって2030年までに世界各地で約1400万人の死者が出て、うち約450万人は5歳未満の幼児になると推計した研究者らの論文を掲載している。

 AP通信によると、政権は対外援助の新年度予算で、これまでの半分以下となる170億ドル(約2兆4千億円)しか要求していない。

 オバマ元大統領とブッシュ(子)元大統領は6月30日に職員たちのオンライン会合にメッセージを寄せた。オバマ氏は、USAID廃止は「途方もない間違いだ」と述べた。ブッシュ氏は、途上国でのエイズ対策を挙げて「あなたたちは米国の力を示してきた」と職員をたたえた。


【インサイド】米のソフトパワー 減退必至

【ワシントン共同】米政府が、途上国で貧困削減や民主化支援に取り組んできた国際開発局(USAID)を廃止した。理念や文化を通じて他国を引きつける「ソフトパワー」の減退は必至で、トランプ大統領は自ら有力な外交手段を手放した。最大の競争相手、中国にとっては影響力拡大の好機になる。

 「米国の良心だった」「USAIDは米国そのものだ」−。米メディアによると、ブッシュ(子)、オバマ両元大統領は廃止前日の6月30日、USAID職員に向けたビデオメッセージで組織廃止を嘆いた。

 USAIDはエイズを含む感染症予防や干ばつ対策、学校建設などに取り組んできたほか、民主派や人権擁護団体を支援。「内政干渉」との批判をはねつけ、自由や法の支配といった民主主義の価値観を浸透させて世界中で「米国ファン」を生む役割を果たしてきた。

 直近の年間予算は連邦政府全体の1%にも満たないが、費用対効果が分かりにくい点などから、歳出削減を公約に掲げたトランプ氏に狙い撃ちされることになった。

 中国にとってはアジアやアフリカで米国が去った空白を埋める絶好の機会となる。既に南アフリカやネパールに援助を申し出ているとも伝えられている。インフラ整備などの経済援助を通じて、自国に有利な世論形成を図るとの見方は強い。

 オバマ氏はUSAIDの役割をたたえ「いずれ、重要性を思い知ることになる」と警鐘を鳴らした。


パックスアメリカーナの終焉との印象は強い。これまで果たしてきたUSAIDの役割は二面性を持っていることは記憶しておかなければならない。民主主義と住民の厚生への援助と同時にアメリカ文化の浸透と資本の収奪を支えてきたのだから。かつてキリスト教宣教師が「遅れた世界」の啓蒙のために海外進出していたことともパラレルではないだろうか。


7月2日 厚労省 被爆者数10万人割れ

 被爆者健康手帳を持つ全国の被爆者が2024年度末時点で9万9130人(前年度比7695人減)となったことが1日、厚生労働省のまとめで分かった。 10万人を下回るのは、旧原爆医療法施行で手帳交付が始まった1957年度以降初めて。平均年齢は86.13歳で、0.55歳上昇した。今年で戦後80年となり、高齢化する被爆者の医療と介護、体験継承の在り方が問われている。

 厚労省によると、都道府県別では広島の4万8310人が最多。長崎が2万3543人、福岡が3957人と続いた。少ないのは山形6人、秋田12人、岩手15人だった。

 57年度に約20万人だった手帳の所持者数は、80年度に37万2千人を超えて以降、減少傾向が続いた。99年度に30万人を切り、2013年度に20万人を下回った。

 被爆者手帳は@原爆投下時に国指定の区域にいたA投下後2週間以内に広島、長崎市内に入ったB身体に原爆放射能の影響を受けるような事情の下にあったC母親の胎内にいた―のいずれかに該当すれば被爆者と認定、交付される。医療保険の自己負担分が国費で賄われ、疾病に応じて手当が出る。自らの意思で手帳を申請しない該当者もいる。

 広島で原爆投下後に一定の地域で「黒い雨」を浴びた住民については、広島高裁が21年、訴訟の原告全員を被爆者と認め、国は翌22年から新しい認定基準の運用を始めた。一方、指定区域外で原爆に遭った長崎の「被爆体験者」など、被害を訴えながら被爆者と認定されない人もいる。


「歴史から学ぶことが重要」

 舞鶴引揚記念館(舞鶴市)や滋賀県平和祈念館(東近江市)など、戦争や平和に関連する資料を展示する全国の13施設は1日、戦争の歴史から学ぶことが重要だとする共同声明を出した。

 13施設でつくる「全国関連施設ネットワーク会議」名の声明は、戦争体験者の証言を直接聞く機会が減る中、各施設が戦争の記憶を次世代に引き継ぐための取り組みを続けていることを紹介。戦争への危機感が強まっている今こそ「過去の戦争がいかに多くの人々を苦しめ、大切なものを奪ったのかを歴史から学ぶことが重要である」と述べている。

 東京都内で記者会見した平和祈念展示資料館の増田弘館長は、中高生を将来の語り部として育成する舞鶴引揚記念館の取り組みを紹介し「高齢の語り部に依存することは難しい。施設間でノウハウを共有しながら情報を発信していきたい」と話した。


「被爆者数10万人割れ」とのリードをどう読めばいいのか逡巡してしまう。「80年度に37万2千人」超という数字にも驚いてしまうのだが、実際には直接の死者も含めて大勢の人たちが原爆の被害を受けている。そして、戦争にかかわる「語り部」も高齢化で大きく減少しているという。これまで、被害を受けた側や加害の側の証言が「語り」の中心となってきていた。今後、若い人たちを「語り部」として育てていくことが重要となってくるが、戦争が過去このことではなく現在と地続きであることを知らせていく役割が求められるのではないだろうか。


7月1日 亀岡市会 ひめゆり発言 「遺憾」

 亀岡市議会は30日の本会議で、沖縄戦の慰霊碑「ひめゆりの塔」の展示について「歴史の書き換え」などとした自民党の西田昌司参院議員(京都選挙区)の発言を念頭に、「遺憾の意を表明する」とした決議案を賛成多数で可決した。提案者の一人は自民党籍を持つ市議で、保守系会派からも賛成者が出た。

 議長を除いた市議23人のうち、13人が賛成、9人が反対し、1人が退席して可決された。

 決議は亀岡市内の児童生徒が沖縄や広島を訪問して平和学習をしているとし、「沖縄県民は国内最大の地上戦で多くの方が犠牲になり、筆舌に尽くしがたい苦難を経験された」と言及。西田氏の名や発言内容には触れずに、「国会議員による信じがたい発言や見解があったことで、沖縄県民のみならず多くの方の心を深く傷つけた」と批判し、「史実に基づいた正しい歴史認識」を後世に伝える重妥性を訴えた。

 保守系会派・新清流会(7人)の西口純生市議と躍動〜輪の風〜(4人)の松山雅行市議が共同提案した。自民党籍を持つ西口市議は賛成討論で「国政を預かる京都の国会議員が沖縄戦の悲惨さも知らずに発言した。政治的なことは抜きに、沖縄県民の心情に寄り添うべき」と主張した。

 新清流会は議長を除く6人全員、躍動と共産党議員団(3人)も全員が賛成して多数となった。保守系会派の経政会(4人)は3人が反対し、1人が退席。公明党議員団(3人)、亀岡有志の会(3人)は全員が反対した。

 経政会、公明党、有志の会に所属する市議3人は、西田氏の発言に触れず「正しい歴史認識を引き継ぎ、世界平和の実現に努める」などとした決議案を共同提案し、賛成多数で可決された。


府内の北部自治体議会での決議が相次いでいるが、やや緩慢な印象を受ける。透けて見えるのは参議院選を前にした府北部の西田離れか。